3大都市圏(首都圏、東海、関西)で平均時給が過去最高に
今年11月26日、こんなニュースが飛び込んできました。
「人手不足を背景に、3大都市圏(首都圏、東海、関西)で10月に募集があったアルバイトやパートの平均時給が、2006年以降で最も高くなった。前年同月と比べて8円高い961円。これまで最高だった13年12月の959円を上回った(求人情報大手リクルートジョブズ調べ)」。
これはあくまでも3大都市圏の平均額ですから、東京では時給1,000円を超えていることでしょう。
賃金相場は「東高西低」の傾向
ここで、平成26年10月より適用された地域別最低賃金(時給)を確認してみましょう。全国加重平均額は前年比で16円上昇の780円です。東京都が888円(首都圏平均785円)。大阪は838円(関西平均765円)、愛知は800円(東海平均764円)となっています。最も低いのが鳥取・高知・長崎・熊本・大分・宮崎・沖縄の677円となっています。私が住む長野県は15円上昇で728円です。
8時間勤務で1か月に22日勤務した場合にどれだけの差になるのか?比較してみます。
・3大都市圏平均時給:921円×176時間=162,096円
・東京都最低賃金:888円×176時間=156,288円
・長野県最低賃金:728円×176時間=128,128円
・鳥取県等最低賃金:677円×176時間=119,152円
それぞれ、東京・長野・鳥取等の最低賃金との月額での差額は5808円、33,968円、42,944円。「東高西低」の傾向にあります。
人材確保に「時給アップ」で対応するには限界が
時給の上昇により、特に大都市圏では人手確保が困難を極めています。そんな中、人材を確保するために手っ取り早い方法として用いられるのが「時給アップ」です。しかし、現実問題として、時給を上げたからといって、すぐに求人への応募は確保できるでしょうか?
以前から働いている人たちの時給を据え置くということも公平性の観点からできません。それに無尽蔵に時給を上昇させられるほどの余裕もないでしょうし、高い時給で雇ってしまえば経済状況に応じての引き下げもできにくくなることは容易に想像できます。
「やりがい」や「将来のキャリア像」を具体的にアピール
ある調査結果によると、離職や転職理由が必ずしも企業規模・労働時間・休日・賃金ではないという報告もなされています。「人の仕事へ対する動機づけは報酬だけでは無理」という話は聞いたことがあるかもしれません。
就職情報大手のマイナビが行った若者への仕事に関する意識調査によると、「自己のスキルアップや成長実感にやりがいを感じる」と答えた人と、「目標達成にやりがいを感じる」と答えた人がともに約4割という結果になっています。
単なる人手ではなく、優秀な人材を確保したいということなら、労働法規を遵守し、労働条件が相場同等以上なのはもちろんのこと、「自社に入ったらこういったキャリアが築ける」「これだけ大きなやりがいがあります」といったことを具体的にアピールすることが重要と思われます。
(佐藤 憲彦/社会保険労務士)