損害賠償を求め、ベネッセを集団提訴へ
今年7月、ベネッセホールディングスにおいて、顧客情報漏洩トラブルが発生しました。これに対し同社が、情報が漏洩した者について、1人あたり500円分の金券をもって補償する意向を表明していたことは、記憶に新しいところです。
被害者顧客がこの補償をどのように受け止めていたのか、あるいは、この補償がどの程度まで進んでいたのかについては、あまり情報がなかったところですが、今般、被害顧客らが集団提訴を予定しているとの報道がなされました。
ベネッセの提示額は、裁判所が示してきた金額を大幅に下回る
顧客情報などの個人情報が漏洩した事件について、2000年前後頃からのケースを見てみると、裁判に持ち込まれることなく解決したケースでは、500円ないし1000円の商品券やクオカードをもって賠償する例が多数を占めており(大手証券会社ないし生命保険会社によるケースでは1万円の商品券等)、ベネッセもこの流れに従ったものと思われます。
他方で、裁判に持ち込まれたケースでは、住民基本台帳データが漏洩した事件で1万円(別途弁護士費用5000円)、エステティックサロンの顧客情報が漏洩した事件で1万7000円ないし3万円(別途弁護士費用5000円)、大手プロバイダーの顧客情報が漏洩した事件で5000円(別途弁護士費用1000円)の賠償が認められておりますので、ベネッセの提示額は、裁判所がこれまで示してきた金額を大幅に下回っています。
過去の裁判例との比較から、それほど大きな金額にはならない?
報道によると、今回の集団訴訟においては、請求額が1人あたり1万5000円ないし10万円程度を想定しているとのことですが、漏洩した情報が個人の趣味・嗜好や健康状態などといったセンシティブ情報ではないことから、過去の裁判例との比較からいっても、それほど大きな金額にはならないものと推測されます。
被害者がこの集団訴訟に参加するメリットやデメリットというものは、何を望むのかということにもよりますので、一概にいえるものではありません。しかし、ベネッセ側の提示した補償に納得できない被害者が正当な賠償を求めて訴訟したいということであれば、少なくとも単独で訴訟提起するよりも、この集団訴訟に参加することで費用面を抑えられるというメリットはあるように思われます。
(田沢 剛/弁護士)