奨学金借入者4分の1の借入金総額が500万以上だと発表
大学院生の4割以上が奨学金を借り、その4分の1に近い利用者の借入金総額が500万円以上との事実が、「全国大学院生協議会」が発表した調査で明らかになりました。利用者の75%が返済に不安を抱え、奨学金が経済的支援ではなく事実上の「借金」として重荷になっている現状がうかがえます。
数年前まで、高校での奨学金説明会でマネープランの面から話をする機会やマネー相談を受けることがありました。そこで感じたのが、奨学金への知識の乏しさ、思慮の浅さです。中には、奨学金という制度を知らない保護者、利息付きの奨学金を安易な考えで利用してしまう人もいました。また、学校で制度について説明しても、マネープランまでは個々の問題であり、踏み込めないというのが実情です。
奨学金の返済期間を先伸ばしにするのは避けた方が賢明
「日本学生支援機構」の奨学金は、貸与型で利息が付くものと付かないものの2種類があります。借りられる金額には、貸与額から自分で選ぶものもあります。借りたお金は卒業後に返済が開始され、返済期間は最長で20年にもなります。22歳で返済開始ならば、返済が終了するのは42歳。奨学金を一緒に検討した保護者も段々と高齢になっていくため、資金の援助は難しい時期です。以上のことから、返済期間を先伸ばしにするのは、子どもの将来のマネープランを考えれば避けた方が賢明です。
仮に返済期間を大学卒業すぐに開始して10年間だと設計した場合、32歳まで返済を続けることになります。しかし、この年齢感覚を忘れてしまう人もいます。22歳以降に就職した勤務先からの収入を想定していたとしても、実際に働けるかどうかはまだわかりません。高校3年生の時点ではイメージはつきにくいかもしれませんが、それでも奨学金を利用するのであれば、事前に下記の3つのことを実践してからにしましょう。
奨学金制度を利用する前に考えたい3つの確認事項
1.シミュレーションして金額を認識する
日本学生支援機構のホームページでは、実際に何円借りると、何円返済することになるのかをシミュレーションすることができます。返済期間や貸与額で、金額が異なることを理解するのに適したツールです。
2.奨学金利用前から返済金額の準備を
高校在学時点からアルバイトをするなどで金銭感覚を養い、自分が返済する金額について考えることが大切です。また、奨学金を利用したい人は、この時点からアルバイトのお金を卒業後の返済のためにストックしましょう。繰り返しになりますが、奨学金の返済期間を10年に設定すれば、22歳から10年で32歳になります。結婚や出産があればそれだけの支出が必要になり、さらに、車や住宅ローン、そして自分の奨学金など、さまざまな「返済」が重なってしまいます。
3.高校生自身も将来を考えた進路を考える
保護者に任せきりにせず、高校生自身も進学のためにお金を借りなければならない現実を知ったのであれば、自分の進路について考えてみましょう。進学先で学んだことを生かし、本当に仕事を得ることができるのか、就職ができるのか。自分が働いて返せるだけの「余裕資金」について考える時期は、奨学金を借りると考え始めた時から、支給が始まる大学生になるまでと、意外に短いということを忘れないでもらいたいと思います。
(堀口 雅子/ファイナンシャルプランナー)