「お正月は大金が降ってくる日」という認識を持たせかねない
お年玉は、子どもにとって「大金」を手にする機会の代表例です。「Six(6)・ポケット」という、子どもにとっての財布が、両親+両親の祖父母の3世帯あわせて6つあることを指す言葉まで現れました。
総務省の平成24年家計調査によると、元旦における1世帯あたりの「贈答金+他のこづかい(いわゆるお年玉)」支出は、8,748円でした。この金額が3世帯からそれぞれ支出されるとすれば、子どもが受け取るお年玉は、数万円単位に上ることが容易に想像できます。
物心のついた小学生以上の子どもにこのお年玉を全額渡せば、さぞや喜ぶに違いありません。だからといって、全額を渡すことは「好ましい」とはいえません。当たり前ですが、お金は「もらうもの」ではなく、「働いて稼ぐもの」です。子どもの立場で考えると「お正月は大金が降ってくる日」という認識を持たせかねず、浪費という誤った金銭感覚を身につけてしまう懸念があります。
お年玉を預かる際、預金の意味や目的・効用について話し合いを
以前、小学校で出前授業を実施した時のことです。サイコロの出た目に応じて、お年玉の使い道を決めるというゲームの中で、6つの選択肢に「親に全額預ける」という項目を設け、それが出たことがありました。「もらったお年玉が使えない」という結果に、教室内は一斉に悲鳴とも呼べるほどの大ブーイング。その結果を受けて、子どもたちはしぶしぶ預金に応じるものの、決して納得したわけではありませんでした。そこで「お金はいつも自分の思い通りに使えるとは限りません。お年玉を預けることで、あとで必要になった時に使うこともできるし、無駄使いをしないためにも大切なことだよ」と一言申し添えておきました。
ただし、子どものためを思い、お年玉を預かることは大切なことだと思いますが、その際には、預金の意味や目的・効用について話し合いをしましょう。その際、全額を預からず、「お金を使う練習」の意味を込めて、子どもにお年玉の一部の使い道を決めさせることも必要なことです。また、「もらった」お金は、「自由に使える」わけではないということも、あわせて理解させたいものです。
子どもへのメッセージを込めて預け先を決める
一方、預かったお金は、何も考えずに金融機関に預ければ良いというものではありません。子どもへのメッセージを込めて預け先を決めましょう。お金を使う練習として位置づけるのであれば、子ども名義の口座を開設し普通預金にいれ、例えば家族の誕生日にプレゼントを買う、あるいは必要な文房具を買うなどの時のために出しやすいところが良いでしょう。
進学資金など子どもの将来に役立てるという意図であれば、一定期間使わないことが想定されるため、その時期に合わせて満期が到来する定期預金などが候補になります。いずれにしても超低金利の状況下ですので、金利云々よりも預け入れ目的にあった商品を選択しましょう。
子ども時代の1万円は「何でも買える」大金かもしれません。ところが、大人に成長したあとの1万円は、大金ではあるものの「なんでも買えるほど」ではなくなってしまいます。お年玉をきっかけに、子どもの成長に合わせながら、お金との付き合い方を家族で考えつつ、学習できるようにしたいものです。
(石村 衛/ファイナンシャルプランナー)