セブンカフェドーナツ、1年間で600億円の売り上げを目指す
(株)セブン-イレブン・ジャパンは、関西地区のセブン-イレブン店舗から「セブンカフェドーナツ」を順次発売し、2015年8月末までの全国展開を予定していると発表しました。レジ横にドーナツ専用の什器を設置することで、好調のセブンカフェと一緒に買ってもらうという相乗効果を期待し、1年間で600億円の売り上げを目指すとのことです。
2012年度のドーナツ市場が約1300億円。600億円という金額は、それの約半分近くを占める規模です。ただし、単純にドーナツ市場のシェアが奪われるというよりも、セブンイレブンの参入によって、「ドーナツ市場が拡大される」ということの方が正しいかもしれません。それは、セブンイレブン全店でドーナツが発売されれば、新たにドーナツを購入する顧客が増えることが考えられるからです。
販売力に圧倒的な差。ミスドはセブンイレブンに食われるか?
そんな中、特に注目されているのは、ミスタードーナツへの影響です。なぜなら、8割のシェアを誇るミスタードーナツでさえ1350店舗(2014年3月末時点)であるのに対して、セブンイレブンは1万7177店舗(2014年11月末時点)というように、販売力に圧倒的な差があります。
加えて、ミスタードーナツの人気商品に似たドーナツを、セブンイレブンの方が安い価格で提供しています。ミスタードーナツからしてみれば「顧客を奪われるのではないか」といった懸念がささやかれています。そうならないようにミスタードーナツは、セブンイレブンが仕掛けたドーナツ戦争に、真っ向勝負「以外」の方法で勝負することがポイントになってきます。
真っ向勝負というのは、セブンイレブンに対抗した値下げ戦略のことを指します。しかし、価格で維持できた顧客は、より安い価格によって簡単に奪われてしまいます。また、値下げによって、ブランドイメージの低下や収益悪化にもつながる可能性があるため、ミスタードーナツにとって望ましい戦略とはいえません。ですから、価格「以外」のところで勝負することがポイントになってくるのです。
ドーナツ専門店ならではの「価値」を提供し続けることが重要
私だったら、リピーターを増やす仕組みづくりに注力します。既存の顧客を維持し、新規客をリピーターに変えることで、価格を変えなくても安定的な売上を維持できるからです。幸いにもドーナツへの興味喚起はセブンイレブンが行ってくれるので、新たにドーナツに興味をもった顧客を取り込む(リピーターに変える)ことと、既存の顧客に「やっぱりドーナツといえばミスド」と思ってもらうために、ドーナツ専門店ならではの「価値」を提供し続けることが重要なのです。
ドーナツ専門店ならではの「価値」というのは、味や品ぞろえ、作りたてであることなど様々あると思いますが、大切なのは自社が考えている「価値」ではなく、既存顧客がリピートしてくれている理由が「価値」になるということです。その「価値」を明確にし、それを強みとしてより多くの顧客に伝えることが、リピーターを増やすためには欠かせません。
セブンイレブンの参入によって大きな変化が訪れそうなドーナツ市場。ミスドをはじめとする既存の専門店がどのような戦略で対抗するのか。しばらく「ドーナツ戦争」から目が離せません。
(伊藤 伸朗/集客・顧客情報活用コンサルタント)