確定申告をしないと控除されない「医療費」「寄付金」「雑損」
年末となり、保険会社から控除証明書が届いたり、会社から「扶養控除等申告書」の記載を求められると、年末調整の還付金を意識し始めた人も多かったと思います。
会社勤めの人の所得税は年末調整で精算されますが、所得税を計算するときに所得から控除する所得控除の項目の中には、確定申告をしないと控除されないものがあります。具体的には「医療費控除」「寄付金控除」「雑損控除」です。これらの控除は、自分で確定申告をしないと、還付を受けることができません。
医療費控除は夫と妻いずれか所得の多い人一人にまとめてつける
まず、医療費控除は「本人または生計を一にする親族のために支払ったもの」 が対象となります。共働きの場合、夫と妻それぞれ別々の健康保険に加入しているため誤解している人も多いですが、夫と妻いずれか所得の多い一人に医療費をまとめてつけた方が得です。
というのは、医療費控除は医療費が10万円以上かかった場合に対象となりますので、夫婦別々に医療費を申告すると20万円までは医療費控除の対象とはならなくなってしまうからです。また、所得税は累進税率なので、所得の高い方に医療費をつけた方が、還付の金額は多くなります。
交通費やレーシック・インプラントなどの自由診療も控除の対象に
次に、医療費控除の範囲は意外に広く、医師や歯科医師による診療や治療の対価として支払ったものに限られません。例えば、公共交通機関を利用した場合の交通費も対象となります。バスや電車については領収書がなくても認められます。自家用車で通院する場合のガソリン代は対象となりませんが、骨折により歩行困難な場合などのタクシー代も認められます。
また、眼科のレーシック手術の費用や歯科のインプラントの治療費は、健康保険が適用外の自由診療ですが、医療費控除の対象になります。歯科の歯列矯正など、容ぼうを美化するためのものは対象となりませんが、発育段階にある子どもの成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正については医療費控除の対象となります。
その他にも、薬局で市販している風邪薬については、医師の指示や処方がなくても対象となります。医療費の範囲を細かく調べると時間もかかりますが、その分、還付の可能性も高まるでしょう。
10万円に届かなくても医療費控除の対象となるケースも
さらに、先にも述べた通り、一般的に医療費は「10万円までは医療費控除の対象にならない」と説明されますが、この10万円は「所得金額が200万円未満の場合には総所得金額の5%」と読み替えます。
所得というのは収入とは違います。給与収入が300万円でそれ以外の収入がない場合、所得は192万円(300万円-給与所得控除額「300万円×30%+18万円」)となるため、10万円ではなく、192万円×5%=9万7500円を超える医療費が医療費控除の対象となります。
寄付金控除と雑損控除も確定申告で還付を受けられる
寄付金控除と雑損控除についても、年末調整では控除できません。該当ある人は確定申告で還付を受けることができます。
■寄付金控除
国や地方公共団体はもちろん、公益社団法人や公益財団法人、社会福祉法人、私立学校に対する寄付金など一定の寄付金は、所得控除(もしくは税額控除)の対象となります。その控除額は(寄付金額-2000円)となります。
■雑損控除
生活に必要な住宅、家具、衣類などの資産について、災害や盗難等で損害を受けた場合にも、所得控除の対象となります。資産の所有者は確定申告する本人のみならず、生計を一にする配偶者や親族で、その年の所得が38万円以下の方も含まれます。その控除額は、(1)損害額-総所得額×10%、もしくは(2)損害額-5万円のいずれか多い金額となります。
(西谷 俊広/公認会計士)