受験とは、子どもにとって「人生で初めての壁」
この時期から、受験のプレッシャーにより、カウンセリングに訪れる子どもたちが増えてきます。過去には、「教科書を開くと吐き気がする」「登校しようとすると酷い頭痛に襲われる」など、体に症状が出てしまった子どももいました。
受験とは、子どもにとって「人生で初めての壁」と言っても過言ではないものです。「愛する我が子の受験ストレスやプレッシャーをできるだけ減らしてあげて、100%の力を発揮してほしい」。親なら誰でも、そう願うでしょう。
逆にプレッシャーを与える親のNGワード
しかし、そう願う気持ちが強ければ強い分だけ、逆にプレッシャーを与えてしまったり、親自身が「どう接したら良いかわからない」など、心理的ストレスを抱えてしまったケースもよく聞きます。
親がよく取ってしまう行動は以下の通りです。
(1) 「勉強 順調に進んでるの?」「大丈夫そう?」などの質問のような心配
(2)「これだけやってきたんだから絶対合格するわよ!」などの励ましのような追い込み
(3) 「お前ならもっとやれるはずだ!」などの 叱咤激励のようなダメ出し
(4) 「〇〇君は 毎日○時間勉強しているんだって」などの世間話のような嗾(けしか)け
親としては「応援」しているつもりが、「結局、子どもにプレッシャーやストレスを与えてしまい」→「自己嫌悪になり」→「家族全員でプレッシャー・ストレスを抱える」という負の連鎖に陥る場合も少なくありません。
子ども本人より心配してしまう自分、緊張する自分を受け入れる
人は、いつもとは違う空気感・状況にストレスを感じ、経験の無い圧力にプレシャーを感じます。受験という初めての壁に望む我が子への一番の応援方法は、できる限り「自然」に徹し、いつも通りの家庭の空気感をつくってあげることでしょう。
ただ、この「自然な家庭の空気感をつくり出す」というのは、はっきり言ってかなり難しいものがあります。というのも、頭で理解していてもできないのが人間ですし、愛する我が子のことなら、なおさら。心というのは、禁止されると余計にそのことが強化されたり、気になったりする傾向があります。「自然にしなければ」と思えば、余計に不自然になってしまうものなのです。
むしろ大切なキーワードは、「自然」ではなく「素直」。子ども本人より心配してしまう自分、緊張する自分を素直に受け入れ、その気持ちを、子どもではなく自分自身に投げかけてみましょう。「あの子を愛しているんだから心配して当たり前だよ」「ヤバい!こっちが緊張してる。でも愛している証拠」など、自分のドキドキ・ハラハラの気持ちを認め(受け入れ)、そして自分で許してあげることがとても効果的です。しばらくすると、自分の感情を少しコントロールできるようになるはずです。
大丈夫と思ってなくても「大丈夫」と言い続ける
子どもへの言葉がけですが、「目を見て笑顔で『大丈夫』」の一言だけで十分。この時のポイントは、大丈夫と思ってなくても「大丈夫」と言い続けることです。心というものは、言葉や行動から、後に変化する場合も多くあります。「大丈夫」と言い続けることで、いつしか親子で「大丈夫」と本気で信じられるようになり、やるべきことへ打ち込む体制が整ってくるはずです。
そうすれば、受験当日100%の力を発揮できると、親も子も信じることができるようになるでしょう。もし、失敗に終わっても、100%の力で望んだのであれば、それは「納得の失敗」。未来へ向けての前向きなリスタートを切らせてくれるはずです。
後悔とは、その多くが「結果」ではなく 「やっておけば良かった…」「もっとこうだったら…」などの「経過」に向けられます。「大丈夫」の魔法の言葉で、愛する我が子の背中を押してあげてください。
(つだ つよし。/心理カウンセラー)