視覚障害原因の第4位「加齢黄斑変性」。10年で患者数が2倍に
加齢黄斑変性という目の病気は視覚障害原因の第4位で、患者数は約70万人。最近10年で患者数が2倍に増えており、今後さらに増えると見込まれ、大きな問題となることが懸念されています。加齢黄斑変性は、加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が生じ、見ようとするところが見えにくくなる病気です。
【加齢黄斑変性の症状】
(1)変視症
ものがゆがんで見えます。しかし、障害が生じるのは黄斑部のみのため、中心部はゆがんで見えますが、周辺部は正しく見えます。
(2)視力低下、中心暗点
さらに黄斑部の網膜に障害が生じると、真ん中が見えなくなり(中心暗点)、視力が低下します。視力低下が進行すると運転免許の更新や、字を読んだりすることができなくなります。通常、視力低下は徐々に進行し、治療をしなければ多くの場合、視力が0.1以下になります。
加齢黄斑変性を発見するための検査方法
(1)視力検査
他の目の病気と同様に視力検査は重要な検査です。加齢黄斑変性では視力低下が起こります。
(2)アムスラー検査
碁盤の目のような(方眼紙のような)図を見てもらい、格子のゆがみを調べる検査です。変視症を早くから検出することができます。簡便な検査で、自宅でもできます。
(3)眼底検査
眼科医が網膜の状態を詳しく観察する検査です。網膜の状態が詳しくわかり、出血や新生血管がわかります。記録のために眼底カメラで眼底写真に保存することがあります。
(4)造影検査
静脈から造影剤を注入した新生血管などの状態を詳しく調べる検査です。フルオレセイン造影検査とインドシアニングリーン造影検査の2種類の検査があります。いずれの造影検査も連続して何枚もの眼底写真を撮影します。
(5)光干渉断層計
網膜の断面を連続して撮ることにより、網膜やその下の新生血管などの状態を立体的に把握することができます。短時間で検査ができ、造影剤を使わないため患者にかかる負担が少ないことが特徴です。頻回に検査を行うこともできます。
光線力学的療法やVEGF阻害薬が最近の治療の主流
現在のところ「萎縮型の加齢黄斑変性」には、残念ながら治療方法はありません。しかし、「滲出型の加齢黄斑変性」には、いくつかの治療法があります。治療の目的は、脈絡膜新生血管の拡大を抑え退縮させ、視力を維持あるいは改善することです。視力が良くなることもありますが、正常に戻ることはほとんどありません。
(1)薬物治療
加齢黄斑変性の発生には血管内皮増殖因子(VEGF)が関係していると考えられており、VEGFを阻害することにより脈絡膜新生血管を退縮させる治療法です。現在認可されているVEGF阻害薬にはマクジェン(R)、ルセンティス(R)、アイリーア(R)という3種類の薬があり、いずれも目の中(硝子体腔)に注射します。
(2)光線力学的療法(PDT)
ビスダイン(R)という光感受性物質を点滴し、その後に非常に弱い出力の専用のレーザーを病変に照射する治療法です。治療のためには専用のレーザー装置が必要であり、眼科PDTの認定医が行う必要があります。
(3)レーザー凝固
脈絡膜新生血管が黄斑の中心から離れた場所にある場合には強い出力のレーザー光線で病変を凝固し、破壊することがあります。
(4)手術
脈絡膜新生血管を抜去したり、黄斑を移動させる手術が以前は実施されていましたが、最近は光線力学的療法やVEGF阻害薬が使えるようになり、ほとんど行われなくなっています。
加齢黄斑変性の予防には、禁煙と魚中心の食事が効果的
(1)禁煙
喫煙は、たくさんの研究で明らかになっている確実な危険因子です。禁煙しましょう(ただし、禁煙の効果が出るには10年くらいかかるという報告もあります)。
(2)サプリメント
ビタミンC、ビタミンE、βカロチン、亜鉛などを含んだサプリメントを飲むと加齢黄斑変性の発症が少なくなることがわかっています。
(3)食事
緑黄色野菜はサプリメントと同様に加齢黄斑変性の発症を抑えると考えられています。肉中心の食事より、魚中心の食事の方が良いようです。
加齢黄斑変性の前段階所見としては、ドルーゼンと網膜色素上皮の色素ムラがあります。そのような所見がないかを診てもらうために、「老眼」と勝手に決めつけず、50歳を過ぎたら定期的に眼底検査を受けましょう。早期発見、早期治療が大切です。
(田川 考作/眼科医)