現在、8戸に1戸の割合で空き家が存在する
近年、空き家の増加が社会問題として取り上げられるようになりました。ある調査では、8戸に1戸の割合で空き家が存在し、今後も増え続けると予測されています。放置された空き家が増えれば、伸び放題の草木による街の景観悪化、災害で木が倒壊することによる近隣への迷惑、果ては犯罪の拠点に使われる可能性もあるなど、問題点は数多く浮上します。
しかし、こうして一方的に悪者にされている「空き家」も、冷静に考えれば物理の法則に従ってたたずんでいるに過ぎません。本来は捨て猫や捨て犬の問題と同様に、人間が最後まで責任を持って管理していないことが問題なのです。
空き家解消に対する国の対策が「固定資産税優遇の見直し」
そこで今回、国が打ち出した対策が固定資産税優遇の見直しです。この「固定資産税の優遇措置」というのは、住宅が建っている土地の固定資産税を6分の1にするというものです。筆者の家を例に考えると、本来13万円の固定資産税が2万円弱になるありがたい制度だと言えます。
その昔、高度経済成長以降の住宅不足を受け、1973(昭和48)年、国はこの優遇措置を設けて住宅建設を後押ししました。そして、放置された空き家が社会問題化した現在も、土地の上に住宅がある限りこの制度が適用されています。今回、国はこの優遇措置の存在が、放置された空き家の増加原因と考えたわけです。
固定資産税優遇の見直しでは、空き家問題は解決しない
あらためて説明すると、住宅が建っていれば2万円弱の固定資産税が、住宅を壊せば本来の13万円の固定資産税に戻ってしまいます。当然、所有者は住まなくなった家でも壊そうとせず、同様に考える人が増加することで放置空き家も増えているというカラクリです。
では、今回の見直しで空き家問題が解決するのかと言えば、答えはNOです。例えば「借地上の空き家」に対し、この制度は全く効果を発揮しません。借地の場合、地主から土地を借りて自分の家を建て、家を放置して土地の固定資産税が6倍になったとしても、家の所有者には何の不都合もありません。反対に地主には大きな影響があります。
自動車や家電製品の世界に解決のヒントがある
以上のことから、この「放置空き家」の問題に関しては現状、有効な解決策がありません。しかし、自動車や家電製品の世界には解決のヒントがあります。新品を販売する時点であらかじめ処分費用を徴収し、基金としてプールする方法です。耐久消費財で適用されているこの仕組みが住宅で適用できれば、不要な家も基金から取り崩して解体可能で、空き家として放置されることはなくなります。
もちろん、住宅の取り壊しには150万円程度必要となるため、計算では現在の住宅価格が5%ほど上がることになります。残るは一般消費者や社会が受け入れるかどうかですが、真剣に考える時期を迎えているのではないでしょうか。
(中山 聡/不動産鑑定士)