安くなる自国通貨とインフレへの対応を図ることが円安対応策
各種機関による2015年末の円ドルレートの予想平均値は、1ドル128円程度です。一部では140円の予想まで出ています。円安予想の背景として、日米の景況感の格差(米国経済が堅調vs日本は脆弱)、日米の金融政策の乖離(米国が利上げ局面vs日本は追加緩和見込)、日本の貿易赤字体質定着などが挙げられます。
今後、本当に長期的にも円安が継続し超円安になるのかはさて置き、超円安時代には何が問題となるのでしょうか。
・円が安くなるため外貨へ換算した場合の円の手取りが少なくなる
・輸入物価の上昇に伴い国内物価が上昇する
・インフレ抑制、為替防衛のために金利が上昇する
・財政規律への不信任とつながった場合、急激に金利が上昇する
つまり、安くなる自国通貨とインフレへの対応を図ることが円安対応策となります。個人ができる対応策として、一般的には次のようなことがいわれています。
・円貨よりも外貨を持つ
・株や不動産などインフレに強いといわれる資産を持つ
・外国に移住する
投資期間によっては、外国株式や外国不動産に投資するのも一法
まず、「円貨より外貨」という点についてです。外貨預金、FX、外貨資産などの保有が該当しますが、投資活動にどれだけ日々時間を割くことができるか、投資期間をどう設定するかによります。
例えば、細かくマーケットを見ていくつもりはなく、1年だけ為替にかけてみようということであれば、単純に為替変動だけが損益に影響する外貨預金が良いでしょう。中長期で投資するならば、仮に想定通りに円安に振れなくても、現地通貨ベースの資産価格自体の上昇が期待できる外国株式や外国不動産などに投資するのも一法です。
「国内の株式や不動産への投資」はインフレ対策としては有効
次に、「国内の株式や不動産への投資」については、安くなる通貨への対策にはなりませんが、これに付随するインフレ対策としては有効な投資です。ただ、高値掴みをしないよう、投資するタイミングが重要となります。
例えば、不動産投資家は、投資利回りが低くなりすぎて、良い物件への投資ができないでいます。ここに「買いたい病」にかかった初心者が入っていけば、売りたい先人投資家の「良い鴨」になるだけでしょう。ただ、マーケットサイクルが一巡して次の局面に移行してしまうまでの期間、例えば10年以上の投資を行える人は、非常な高値で掴まない限り、現時点でもこれらインフレ対応資産への投資を行うことには意味があるといえます。
もっとも、多額な資金を投入しての実物不動産投資に自信がない人は、J-REITで代替させるべきです。また、株式やJ-REITの個別銘柄への投資も選別力が必要なため、これに自信がない人は、当該資産の指数に連動するETFでコストを抑えて投資することをお勧めします。どうしても資産価格が変動するリスクを取りたくない人は、今年から解禁された10年物の個人向け物価連動国債を満期まで保有するのも一法です。
そして「外国に移住する」は、税務と受入基準、受入国での安定生活等を考えると、超富豪にしかお勧めしません。
最も重要なのは基本ポートフォリオを構築すること
以上は、円安対策としてのピンポイントの方法論です。ただし、中期的に一方的に円安が進むと見る向きは多くないようです。また、私の持論である「アナリスト予想は外れる」というポリシーからも、やはり、外貨vs円貨、国内資産vs海外資産、リスク資産vs安全資産の比率を、過度に単一のシナリオに賭けることなく、自分のリスク許容度に応じて設定した基本ポートフォリオを構築することが最も重要だと考えます。
この基本ポートフォリオを、時々のマーケット見通しに基づき、適宜緩やかに変更することで資産防衛を図るべきなのです。
(賀藤 浩徳/不動産投資アドバイザー・マネーアドバイザー)