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勤務中は全面禁煙、労働者の権利侵害に?

JIJICO 2015年1月16日 17時0分

リコー、勤務時間中は全面禁煙に。社員の健康に配慮

事務機大手のリコーは、国内のグループ会社で勤務時間中、全面禁煙にした、と発表しました。定時の就業中であれば、社内だけでなく出張や外出先でも禁止にするようです。理由として、他人のたばこの煙を吸う受動喫煙を防ぎ、社員の健康に配慮するためとのことです。

企業において禁煙を義務化しようと非喫煙者が声を上げた時に必ず出てくるのが、喫煙者からの「喫煙する権利がある」というものです。トイレに行くのと同じで、喫煙することも生理現象と同じ、という反論が必ず上がります。また、喫煙所でのコミュニケーションによって業務が円滑に進む、という主張もよく聞かれます。そもそも、社長をはじめとした役員が喫煙者の会社では、なかなか社内全面禁煙を強行するのは難しいケースもあるでしょう。

喫煙の自由は、制限に服しやすいもの。職務専念義務も発生

はたして労働中の喫煙は、権利なのでしょうか?最高裁の判決(昭和45.9.16)では、「喫煙の自由は、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない」とされており、制限に服しやすいものとされています。また、忘れがちですが、労働者は就業時間中、勤務に専念しなくてはならないという義務を負っています(職務専念義務)。いくら喫煙所でのコミュニケーションが業務に役立つといっても、その間、業務に専念していないため、能率低下を指摘されてもなかなか反論できません。

さらに、近年、受動喫煙の有害性に関する医学的知見も深まり、その危険性が次々と明らかにされています。受動喫煙は「他者危害」といえる時代になってきたのです。さらに、企業側のリスクから見ると、受動喫煙対策をしなければ安全配慮義務違反として従業員から損害賠償請求される可能性もあります。

勤務中の全面禁煙は労働者の権利侵害とはならない

以上のことから、勤務中の全面禁煙は労働者の権利侵害とはならないと言えると思います。もちろん、あくまでも今回の結論は、勤務時間中に限った話です。

また、近年、採用時に禁煙者のみ採用とする企業も増えてきています。企業には採用の事由が認められており、禁煙者のみ採用することは、差別とは言えず、合理的な理由のあるものとして認められています(例えば三菱樹脂事件)。

たばこは、喫煙者自身の健康に悪影響を及ぼすだけでなく、他人にも迷惑をかけるものとして認識されつつある時代がやって来つつあります。喫煙者は、早めに禁煙外来に行って適切なサポートを受けながら禁煙する方が良いかもしれません。

(植田 健太/臨床心理士・社会保険労務士)

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