USJ「また」値上げ、そのワケは?
新年早々に、USJが「また」値上げすることを発表しました。「また」というのは、ここ数年、毎年のように値上げを発表しているからです。
値上げというのは、売上を増やす最も簡単な方法です。値上げをする理由は主に二つ。一つは、利益を増やすため。もう一つは、利益を維持するためです。前者は値上げした分だけ利益を増やすことができますが、後者は原価が高くなってしまったことを受けて、利益を維持するために行うものなので、利益は増えません。
しかし、消費者にとっては支払う金額が高くなることには変わらないため、決して喜ばれるものではありません。そのため、安易に値上げできないですし、値上げをする際にはその理由を伝えるということも必要です。値上げの理由を伝えない、または、納得のいかない理由での値上げでは、顧客は不信に思い離れていってしまいます。
では、USJの場合はどうでしょうか?USJは値上げの理由を「ゲストの皆様のパークでの体験価値向上に合わせて」としています。
過去最高の入場者数を更新する見通し。「納得のいく値上げ」に
昨年「ハリー・ポッター」や「ワンピース」「バイオハザード」など、新しいアトラクションやショーといったエンターテイメントに追加投資をしていることや、今年も「ユニバーサル・クールジャパン」といった新しいイベントを開催予定ということを考えると、入場者の体験価値を高めるための活動をしていることがわかります。
その結果、毎年のように値上げをしているにも関わらず、2010年度から入場者数は右肩上がりで2014年度は過去最高の入場者数を更新する見通しになっています。値上げをしても入場者数は増えているということから、顧客にとって「納得のいく値上げ」になっているのでしょう。つまり、USJの値上げはマーケティング戦略的にOKということになります。
ただし、値上げ戦略には注意も必要です。というのも、値上げをしても入場者が増えているのは、USJが提供する体験価値が価格を超えているからであって、もしも、価格が体験価値を上回ってしまう、つまり割高感が発生してしまうようになれば、顧客離れが起きてしまうからです。
価値と価格の関係を意識。今後も独自に値上げしていく可能性も
ちなみに、価格の決め方は主に三つあります。一つ目は、販売までにかかったコストに一定の利益をプラスする方法です。コスト・プラス法というもので、原材料費などの製造原価に一定の利益を加えたものを販売価格とします。
二つ目は、市場価格に基づいて決める方法です。同業他社がつけている価格を参考に、自社の販売価格を決めます。そして、三つ目は、顧客の需要に合わせて決める方法です。顧客の値ごろ感や購買習慣に基づいた値段の決め方で、「いくらだったら購入するか?」という顧客の需要に合わせて決定します。
恐らくですが、USJは開園当初は東京ディズニーリゾートの価格を参考にしていましたが、現在では投資コストや顧客の値ごろ感を考慮して、独自の販売価格を設定していると考えられます。ということは、今後も独自に値上げしていく可能性はあるということです。
価値と価格の関係を意識しているUSJだからこそ、新しいアトラクションだけでなく、価格と入場者数の変動にも注目していきたいところですが、一消費者としては、値上げは勘弁してほしいものです。
(伊藤 伸朗/集客・顧客情報活用コンサルタント)