若者が将来年金をもらえないということは考えられない
昨年10月に日本生命が実施した調査で、20代以下の17%が老後に公的年金をもらえないと思っているとの結果が出ました。現在、年金は高齢者世帯の所得の約7割を占め、さらに高齢者世帯の6割以上が年金所得だけで生活しています(厚生労働省「国民生活基礎調査」平成26年、平成21年)。将来的にも、高齢者の生活を支える大きな収入源であることは変わらないでしょう。
年金制度を廃止すれば、多くの高齢者が生活保護を受給することになります。年金は保険料を徴収しているため、税負担は基礎年金の2分の1だけですが、生活保護は全額税金です。財政影響の大きさを考えれば、制度を廃止することは現実的ではありません。少子高齢化の進行で受給開始年齢の引き上げや受給額の減額が行われることは考えられますが、若者が将来年金をもらえないということは考えられません。
年金額は人によって大きく異なる
老齢基礎年金(国民年金)は、保険料納付月数や免除月数に応じて支給額が決まります。厚生年金被保険者であれば、さらに老齢厚生年金を受給できますが、加入期間や報酬によって金額が異なり、受給権発生後も厚生年金に加入して働けば支給額が調整されます。つまり、年金額は人によって大きく異なります。
平成25年度末、現在の平均年金月額は国民年金が約5.5万円(基礎年金のみの受給者の場合は約5万円)。厚生年金受給者は基礎年金も含めて約14.6万円です(厚生労働省「平成25年度厚生年金保険・国民年金事業の概況について」)。公的年金というと老齢年金をイメージする人もいますが、障害の程度が重く就労が困難になった場合や、万一のことがあった時に残された家族の生活を支えるため、障害年金と遺族年金の制度もあります。
保険料未納は避けた方が賢明
障害年金は初診日に被保険者であることが要件で、遺族年金は受給できる遺族に要件がありますが、これらをクリアしていても保険料未納の期間が多ければ受給できないこともあります。国民年金の障害基礎年金や遺族基礎年金は保険料免除や猶予であっても受給額に影響はなく、国民年金加入中で経済的に保険料を納付することが難しい人は免除や猶予の制度の利用をオススメします。
20代が突然60代になることはありませんが、障害を負ったり死亡することはあります。若くても年金は遠い将来のことと考えず、近い将来年金を受給する可能性があることを理解し、保険料未納は避けた方が賢明です。でなければ、遠い将来の老後であれ近い将来の万一の時であれ、本当に「年金をもらえない」という事態になりかねません。
(藤原 武志/社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー)