国立国会図書館所蔵のデジタル化された資料を国内の図書館で
国立国会図書館に所蔵されているデジタル化された資料を国内の図書館で閲覧・複写できる「図書館向けデジタル化資料送信サービス」が、広まりつつあるようです。現在、このサービスに参加している図書館は、全国で413館あるとのことです(大学図書館を含む。国立国会図書館公表、2015.1.15現在。ただし、一覧への掲載を了承した図書館に限った数)。
そもそも国会図書館とは、どういったものなのでしょうか。よくいわれるところでは、国会の附属図書館であるほか、「日本最大の蔵書・資料を有する図書館」であり、近隣の図書館で探しても見つからない本や資料は、国会図書館へ行って探すのが基本である、そんな位置づけにあります。また、日本国内で出版され、ISBNコードを有して流通しうる本は、「納本制度」により、みな国会図書館に寄贈されます。「本を出す」立場から見ると、「自分の書いた本、出した本」が、国会図書館には必ず存在しているということになるのです。
まさにICT時代の恩恵。「教育の質」を保つ利器となる
さて、この国会図書館の蔵書・資料についてですが、「ここでしか見つからない本や資料」が、多数収蔵されているわけですから、その価値は極めて大きなものです。しかし以前は、直接、国会図書館へ行くか、「図書館間貸出し」によって利用できる図書館で取り寄せてもらう以外、その資料を見たり複写したりすることはできませんでした。それが、最寄りの図書館から、もしくは自分のPCから直接インターネットで閲覧・複写できるのですから、これはまさしく、現代のICT時代の大きなメリットであると言えるでしょう。
そして、このサービスが拡充されることは、ICT時代なればこそ、「教育の質」を保つ上での一つの利器となることが期待できるのではないでしょうか。大学の卒業論文におけるウィキペディアからの引用の可否が問題とされるようになったのは、ここ3~4年のことではありません。「典拠が明らかでなく、きちんとした検証を経ていない仮説や考え」をよりどころにして「論文」などを書くことは、やはり好ましくないと考えますが、一方において、さまざまなモノやサービスが簡単に入手できる世の中で、「国会図書館の資料を入手するためにはそこまで行かなければならない」というような状況が変わらないのであれば、いずれ追認やむなしとせざるを得ないことにも、なりかねないでしょう。
「学問」の姿勢を維持向上させるため、サービスの充実に期待
論文に限らず、大学や公共の図書館、また自宅のPCで国会図書館の資料を閲覧・複写できるならば、より多くの人が従来は入手しにくかった資料を手にすることができるわけですから、こうしたサービスは大きく広がって良いことだと思います。試みにいくつかのキーワードで、国会図書館のデータ検索をしてみましたが、通常の検索では上位に出てこない興味深い資料がたくさん見つかりました。
この国会図書館のデジタル資料送信サービスは平成25年末に開始されたとのことです。18歳以上の人であれば、利用者登録をして直接インターネットで申し込むことも可能です。また、各図書館からの利用は、その図書館の利用条件によるようですから、18歳未満の人(高校生など)でも利用できる可能性があるかもしれません。もちろん自宅にPC環境の整っていない人などのために、図書館での利用は大いに役立つことでしょう。
ネットの利便性を生かし、「学問」の姿勢を維持向上させる上で、こうしたサービスがさらに充実することを願うものです。
(小田原 漂情/塾教師、歌人・小説家)