怒りの感情で子どもに接すると、いずれ問題が表面化しかねない
虐待による悲惨なニュースが後を絶ちません。また、「心理的虐待」の検挙数も年々増えています。
イライラや怒りの感情で子どもに接すると、その影響は早ければ幼児期に、また、思春期や成人してから何らかの身体症状、あるいは精神病理として表面化することがあります。
「言いたいことを感情のままに子どもにぶつけていました。当時は、子どもが成長したときにどんなことになるかなど、何も考えていませんでした」「自分のことでいっぱいで、子どもを叱ったり、おどしたりしていました」。これらは、思春期に「行き渋り」や「不登校」になってしまった子どもを持つ保護者の言葉です。また、直接、叱ったり脅したりしなくても「あなたがいたから離婚しなかったのよ」といった責任を押しつけるような言葉や、配偶者や家族の愚痴を言うことも子どもの記憶に強く残ります。
大人が感情をコントロールすることが健康な心を育てるカギ
子どもの健康な心が育つには「安全で安心できる居場所」が重要です。イライラや怒りの感情が自分に向けられる、あるいは、兄弟など、その他の家族に向けられる家庭では「安全感、安心感」を持てません。幼い子どもは「自分が悪いから」「自分さえいなければ」と自分を責めたり、他者に対して不信感、恐怖感を持ったりするようにもなります(もちろん、とらえ方、感じ方には個人差があります)。
子どもに接する大人が自分の感情をコントロールすることは、子どもの健康な心を育てるカギとなります。まず、感情やストレスは、誰が解決すべき課題なのかを考えます。例えば「私は、子どもが言うことを聞かないので、イライラする」。「自分をイライラさせているのは子どもだから 子どもが悪い」と思いがちですが、誰がイライラしているのでしょうか?もちろん、イライラしているのは「自分自身」です。「感情をコントロールするのは、感情の所有者である自分の課題である」と考えることは 冷静になるために有効です。
「できて当然」と思う子どもの行動に肯定的な声をかけ続ける
次に、自分のイライラの原因となった子どもの行動や言葉には声をかけないようにします。「言っても 言っても、言うことを聞かない!」のは、「言う」ということに効果がないということです。その代わり、「できて当然」と思う日々の行動に肯定的な声をかけます。「がんばってるね」「自分で考えたんだね」「ありがとう」。一時的には、イライラさせる行動は増えるかもしれません。しかし、あきらめないでこの対応を続けると、徐々に変化します。
私たち人間は、誰もが安全で安心できる居場所を必要としています。子どもにとって初めて他者に出会うのは「家庭」です。お母さん・お父さんをはじめとする大人が 自身の感情をコントロールすることが、子どもにとって安心感を持てる居場所をつくることにつながります。そして、子どもの自己肯定感を養う基礎になるのです。
(福田 育子/心理カウンセラー)