メンタルヘルス不調を予防するには「食事が大切」
働く人の「心の健康問題(メンタルヘルス不調)」の増加が、少し前から社会問題となっています。うつに代表される従業員のメンタルヘルス不調は企業経営にとって大きなリスクとなるため、それらを予防する仕組みや環境づくりに関心が高まっています。
私は、企業に対し「セルフケア研修」を多く実施しています。この研修では、一言で言えば「ストレスと上手に付き合う方法」を学ぶのですが、そこでいつも伝えている言葉があります。
それは、「うつなどのメンタルヘルス不調を予防するには食事が大切」ということです。当たり前すぎるのか、それとも、心と食事があまり結びつかないのかはわかりませんが、意外と見落とされがちなポイントだと感じています。なぜなら、心の働きの多くは脳が司っています。その脳に栄養を補給しているのは、体に栄養を補給しているのと同じ「食事」。脳も体の一部ですが、不思議と体と切り離して考える傾向があるようです。
残業が必要な時期には部署全体で一緒に食事をすることも有効
例えば、上司が昼ご飯を食べないで仕事をしていると、部下はなかなか食事に行けないものです。部下がランチタイムをきちんと確保できるように、まずは上司自身が気をつけると良いでしょう。さらに、繁忙期などで残業をするときには、夕食タイムも確保するように気をつけてあげてください。
私が関わっている企業が導入しているのが「どうしても残業が必要な時期には、部署全体で弁当を注文して、時間を決めて皆で一緒に食事をする」という制度です。こうすることによって、上司に気を遣って食べ損なう部下もいなくなります。さらに、仲間と一緒に食事をすると、「また頑張ろう」という雰囲気になるので、チームとしての連帯感や士気が上がるという効果もあります。
「会社として」昼寝を推奨。作業効率の向上も見込まれる
もう一つ、職場でできるうつの予防対策は「昼休み中に昼寝を推奨する」というものです。これが、実はとても効果的です。というのも、うつなどのメンタルヘルス不調のほとんどが睡眠不足を伴います。しかしながら、職場で寝るには抵抗がある人が多いのも事実でしょう。
そこで、「会社として」昼寝を推奨するのです。ある企業では、昼休み中に会議室を解放し昼寝を推奨する、という取り組みをしています。また、昼寝をすることで、睡眠不足を起因とするメンタルヘルス不調の予防だけではなく、作業効率の向上も見込まれます。
このように、セルフケアの第一歩は、「食事」と「睡眠」という基本的な生活習慣の見直しです。食事を抜かせてまで働かせていないか、また、きちんと眠れているか、点検してみてください。
(植田 健太/臨床心理士・社会保険労務士)