2014年の企業倒産件数が24年ぶりに1万件を下回る
東京商工リサーチの発表によると、2014年の全国企業倒産件数(負債総額1千万円以上)は前年比10.35%減の9,731件で、バブル期の1990年以来、24年ぶりに1万件を下回りました。
しかし、この数値は正確な数とはほど遠いものです。発表数値の前提条件には、交通事故による死亡者数(交通事故を原因として24時間以内に死亡した人の数)と同じように、「法人の破産を地方裁判所に申し立てた数のうち、負債総額が1千万円以上の倒産数」という条件があります。
発表数値は実際の倒産数と大きく異なる
そもそも、何も処理をせずに放置して逃亡した会社(例えば、突然、夜逃げしてしまったラーメン店など)の数などは、発表された数値にカウントされていません。実際には、そのような形で倒産してしまった数の方が、はるかに多いといわれています。
そこで、正確に倒産数を把握できるわけではありませんが、中小企業庁の「中小企業白書」で発表される、開業率と廃業率から実際の倒産数を考えていきます。「中小企業白書2014」のデータ(非一次産業)によると、2009~2012年の平均廃業率は6.3%で、年間平均廃業企業数は336,483社に上っています。
倒産数は景気よりも、開業率に因果関係がある
廃業には被害者(債権者)を出さないで会社を終わらせる「清算」と、債権者を出して会社を終わらせる「倒産」がありますが、一般的には清算を目にする機会は多くありません。実際はその大部分が倒産であり、全法人約580万社の6%にあたる34万社のかなりの数が、倒産の実数と見て良いはずです。こうした現実から乖離(かいり)した数字が独り歩きしているのは、交通事故死亡者数と同じように、正確な数字を出せば社会的影響が大きいからだと考えられます。
そこで気になるのは、倒産数と景気との因果関係についてです。先の「中小企業白書2014」のデータでは、「廃業率」と「開業率」が逆転するのが1989~1991年で、それ以降の25年間は廃業率の方が開業率を上回っています。このことから、倒産数は景気との因果関係よりも、開業する事業経営者が少なくなっていることに関連があると思われます。
アベノミクスの成長戦略で掲げる開業率到達は不可能?
また、事業経営(特に小規模零細企業)そのものの難易度が高まっている、とも判断できます。その背景には、コンビニエンスストアチェーンやファストフード店チェーンなどに見るように、大規模で大資本の企業が増加していることにあります。
大企業に対し、小規模零細企業などは、さまざまな要因から対抗できなくなっています。アベノミクスの成長戦略では、開業率を10%台にすると目標を掲げていますが、現状を鑑みれば、個人的にはいくらなんでもそれはあり得ないと思えてしまいます。
(内藤 明亜/経営危機コンサルタント)