中学女子は、1週間に1時間も運動しない割合が多い
文部科学省の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力テスト)によると、中学校では、運動する子、しない子の二極化が進んでいることが明らかになりました。この背景には、現代の便利すぎる環境、外遊びの減少、塾や習い事の増加などがあります。
特に中学女子は、1週間に1時間も運動しない割合が多いようです。将来、どのようなリスクが待っているのか、運動習慣を指導している現場の経験も踏まえてまとめてみました。
ますます「運動嫌い」になり、学力低下にもつながる
まず、運動不足による体力低下が招く身近な悩みとして、以下のことが挙げられます。
■「運動嫌い」になる
子どもは遊びの中で体を動かし、体の使い方、運動習慣を身につけます。そもそも「運動が嫌い」なのではなく、できないから嫌いになるのです。そして嫌いになると、やらなくなり、さらに筋力や体力が低下するといった悪循環に陥ります。
■肩こり・腰痛
今、肩こりや慢性腰痛に悩む小中学生は少なくありません。これも基礎筋力、体力の低下が大きな原因です。
■学力低下
体力がなくては、長時間、座っていることもできません。集中力が低下し、学習意欲、態度、そして、成績にまで影を落とします。
基礎代謝が下がり、太りやすく、妊娠や出産時にも多大な影響
そして、将来的にも大きなリスクをはらんでいます。
■代謝が落ちる
体を動かさないということは、それだけ筋活動エネルギーを使わなくなるため、基礎代謝が下がります。筋肉のポンプ作用が弱くなることで血流も悪化し、冷え性になりやすく、低体温症になれば、さまざまな疾病にもつながります。女性の場合、妊娠や出産時にも多大な影響を与えます。
■肥満
代謝が落ちることによって太りやすくなります。肥満は生活習慣病との関係も深く、血管系の病気(動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞)にかかる確率も上がります。それだけでなく、太るということは体重が増え、体にかかる負担が増すということ。将来、慢性的な膝や腰の痛みにもさらされます。
若い世代に「ロコモ予備軍」が急増。寝たきりになるリスクも
■若くして、骨粗鬆(しょう)症や寝たきりに
生体の機能は使えば使うほど発達し、使わなければ、どんどん萎縮し消えていきます。長い年月、運動をしなくなると、それだけ使わない機能は失われるということです。立つ、歩く、物を持つなど基本的な機能が落ち、若くして、骨粗鬆(しょう)症や寝たきりになるリスクも高まります。
■ロコモティブシンドローム
体の40%を占める筋骨格系などの運動器を使う頻度が少ないと、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の危険も高まります。高齢者の病気ではなく、実際、若い世代の間にも「ロコモ予備軍」が急増しています。
将来の健康リスクを回避するために「貯筋」を
以上のことから、間違いなく健康寿命を縮めることになる可能性は高いでしょう。日本の将来を担う若い学生たちが将来、上記のような健康リスクを回避するためにも、今から学校教育の中で筋力トレーニングなどの運動習慣を少しずつでも身につけさせていく必要があると切に感じています。
ケガや病気をしてからでは遅く、予防は誰でも今すぐに始めることができます。若い人も今から将来のために「貯筋」していきましょう。健康は代えがたい財産となります。
(伊藤 勇矢/柔道整復師)