「孤独力」とは 「孤独に耐える力」ではない
「人間関係に疲れた。寂しさが止まらない」という女性のカウンセリングを担当しました。彼女は、周りの人間関係を良くするために、日々、努力をしているそうです。なのに、あまりうまくいかない。そんな中、誰かと誰かがランチに行った、といった話を聞くと、たまらない寂しさを感じるそうです。
最近、豊かな生活を送るために必要なキーワードとして「孤独力」という言葉が挙げられます。「孤独」と聞くと、先に書いた彼女のように「寂しさ」や「侘しさ」をイメージする人が多いと思いますが、彼女が抱いているのは「孤独感」であり、「孤独力」は真逆の位置にあります。
また、「孤独力」といえば 「孤独に耐える力」と勘違いする人もいるかもしれませんが、違います。
「孤独力」とは、「孤独を積極的に意識し、未来のために使おうと楽しむ力」です。
「一人=社会的にダメな人」という感覚が根づくワケ
もともと人間には、人と群れたい・関わりたいという「群集(集団)欲求」がありますが、相反するように「パーソナルスペース」と呼ばれる「他人には入ってほしくない領域」や、自我を脅かされるのを嫌う「親和回避欲求」というものも持っています。
幼い頃からの「みんなと仲良くしなさい」「友だちが多い方が良い」という教えからバランスを崩し、「友だちが少ないのは寂しい人」「互いのプライバシーの無さが親密の証」「いつでも周りに人がいることこそが幸せ」というような固定観念を持ち過ぎてしまった結果、「一人=社会的にダメな人」という感覚が根づいてしまうようになるのではないかと思います。
「孤独力」が前向きな行動を生む原動力に
例えば、湯船に一人で浸かりながら、また、一人で車を運転しながら「名案が浮かんだ」「これからの人生の方向性が見えた」「ある問題について解決策を考えられた」といった経験はありませんか?
「孤独力」は、他人ではなく、自分の心に軸を立て、積極的に「自分の未来について考え行動に移す」もので、前向きな行動を生む原動力となるはずです。
・人生に迷うことがあれば、誰かに相談する前にあえて一人でカフェに行き、じっくりと考える。自分の考えがまとまったならば、行動に移してみる。
・忙しく、何かに追われるように仕事をしていると感じれば、いつもより少し早く出社して、仕事の順番をじっくりと一人で考える。
・人間関係で悩むことがあれば、一人でドライブをし、自然の中で自分の心を覗く。自分の軸が決まれば、積極的に相手と関係を築く、もしくは距離を置く努力をする。
「自分を殺し、すべて相手に合わせることが正しい」「自分中心に生きることこそが幸せ」など、どちらかに偏るのではなく、バランスが大切です。1日5分でも、意識的に孤独の時間を楽しんでみてください。あの悩みが解決するかもしれません。
(つだ つよし。/心理カウンセラー)