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コンビニ駅が赤字ローカル線を救う?

JIJICO 2015年2月1日 11時0分

ローソンの店舗が駅舎に。「三方よし」の構図

「日頃、何気なく利用する駅がコンビニだったら、どんなに便利だろう」。このような妄想が、現実のものとなりました。ATMも公共料金の支払いも、郵便ポストも、宅配便の受け付けも、文字通りワンストップで済んでしまう理想的な駅舎コンビニが出現したのです。

岐阜県、長良川鉄道「関口駅」。ローソンの店舗が駅舎になっています。

関口駅は1952年開業。駅舎内の喫茶店の経営者が高齢化のため閉店したことで、長良川鉄道が後継店舗を募集したところローソンの出店が決まりました。同時に老朽化した駅舎を立て替えた結果、2013年8月、全国的にも前例のない「コンビニ駅舎」が誕生しました。

鉄道会社は旅客運賃以外の収入が見込め、駅利用者は夜間でも明るく空調が効いた快適な店内で買い物ができ、コンビニのFC本部は宣伝効果によって乗降客以外の利用増も期待できるなど「三方よし」の構図となっています。

生活に欠かすことができない「街のインフラ」になったコンビニ

コンビニエンスストアは、もはや私たちの生活に欠かすことができない「街のインフラ」になりました。とはいえ、便利な新商品やサービスが普及すると姿を消すものも多いようです。コンビニが台頭してきた過程をみると、街から米屋、酒屋、タバコ屋、駄菓子屋、雑貨屋、本屋、文房具屋、金物屋などがコンビニに吸収されていることに気がつきます。これは携帯電話が普及し、公衆電話が姿を消していったことに酷似しています。

一方では、食の内容がコンビニの普及で変化してきています。ファミレスなどで食事をする「外食」に対し、家庭で料理して食事をする「内食」、そしてコンビニの惣菜や、持ち帰り弁当など個食が主体の「中食」に分類されます。その中でも中食の存在感が増しているのは、コンビニに依るところが大です。

鉄道会社とコンビニ各社の思惑が合致した「駅ナカコンビニ」

2000年代より、コンビニ各社の出店競争が激化し、郊外型から病院・大学・官公庁舎などへの出店が増加。2014年7月、JR四国は、管内のキヨスクをセブン-イレブンに転換すると発表しました。セブン-イレブンはすでにJR北海道やJR西日本、京急などと提携を交わしていました。

九州では上場を目指すJR九州の子会社JR九州リテールが運営するファミリーマートが駅構内に出店しています。

コピー、FAX、銀行業務、100円コーヒー、温かい弁当、酒のつまみなど、これまでの駅の売店にはないサービスを欲する鉄道会社と、飽和状態にあるコンビニ各社のシェア争いの最後の砦が「駅ナカコンビニ」であったわけです。

地方の駅舎コンビニ出店は、赤字ローカル線の再建策の有効な手段

日本フランチャイズチェーン協会の2014年の統計によると、コンビニ上位10社の年間売上高は9兆7,309億円(前年比3.6%増)、2014年12月末の店舗数は5万1,814店(前年比5.0%増)、客単価は606.1円(前年比0.04%減)。女性の社会進出、単身世帯の増加、高齢化の進行などによる中食が増え、淹れたてコーヒーを含むカウンター商材や惣菜などが客単価の維持につながっています。

2015年1月、ローソンが展開する100円ショップ「ローソンストア100」の約260店および小型スーパー「ローソンマート」全39店を閉店し、事業から撤退することを発表しました。今後は、ドラッグストア型店舗へ転換するとしています。また、2014年10月、ローソンは都市圏の高級スーパー「成城石井」を買収、さらに中国地方地盤の「ポプラ」に5%の出資をしたばかりでした。スクラップアンドビルドを行い、収益性の高い業態に収れんする動きを速めています。

都心の駅ナカコンビニ出店と同時に、今回の関口駅のように手薄な地方の駅舎コンビニ出店は、赤字ローカル線の再建策の有効な手段になる可能性を示唆しています。他方、日本が生んだ「街のインフラ」であるコンビニの海外輸出に活路を見出そうとする、株主である総合商社の戦略が透けて見えます。

(村上 義文/認定事業再生士)

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