ペットとの絆が強ければ強いほど悲しみや喪失感が大きくなる
飼っていたペットが死亡したり、行方不明になったときに、深い悲しみや喪失感を持つことを「ペットロス」といいます。近年、ペットが家族の一員のような位置づけになっている場合が多く、絆が強い分、別れるときの悲しみや喪失感は大きくなっています。
ペットロスの症状は、ペットを飼っていた家族全員に起きるわけではありません。同じ家族でも、そのペットとの結びつき加減により、症状の出方が異なります。かわいがっていても、適度な距離感で暮らしてきた人は、あまり症状もひどくなく、短期間で悲しみが無くなっていくでしょう。しかし、ペットの面倒を中心になって見てきた人、子どもや友だちのように接してきた人は、乗り越えるのに時間がかかる場合が多いようです。もう一度会いたい気持ちが高じて、ペットの幻影を見たりする人もいます。
ペットロスは、ペットを飼ったことがない人や、ペットとそれほど深いつながりを持たない人には、気持ちが理解できないこともあります。それだけに、自分だけが悲しみに暮れていることに対して、孤独を感じたり罪悪感を持ったりして、症状が長引くこともあります。
ペットを誰かの代わりにしていなかったか?
現代人は、安らぎを求めてペットとのつながりがますます深くなっています。ペットと別れることになったときの乗り越え方を知っておくだけでも症状が軽くなるはずです。
まず「ペットを誰かの代わりにしていなかったか?」と考えてみましょう。悲しくて落ち込んでいるときは無理だと思いますが、少し気持ちが落ち着いてきたら、ペットを子どもや友だち、恋人などの代わりにしていなかったかを考えてみると、その後の人生を見直すことにもなっていきます。
また、「愛されていない」思いが強いと、ペットを愛しすぎてしまう傾向にあるようです。人間は誰でも「愛されたい」と思っていますが、過去に「愛されていなかった」思いがあると、自分が受けたかった愛をペットに向けてしまうことがあります。この原因は、子どもの頃の親子関係までさかのぼります。あまりにペットへの思いが強すぎる場合には、そのあたりの解決も考えてみると良いでしょう。
気がすむまで悲しみ、その後は、日々の生活をきちんと送る
そして、ペットロスを乗り越えるためには、気持ちを抑えず、気がすむまで悲しみ嘆くことをお勧めします。ペットがいなくなって寂しい、悲しい、空虚な気持ち、怒りなどの湧いてくる感情を抑えると、うつ状態に移行したりして長引くことがあります。泣きたかったら泣いて、悲しかったら悲しむことです。そうすることで、時間とともに症状が消えていくでしょう。
もうひとつは、日常生活の中で、やるべきことをきちんとこなすこと。泣き暮れてペットのことばかり考えていると、症状が解消されません。それは、思考が現実化していくからです。日々の生活をきちんと送ることで、悲しみや喪失感を忘れる時間ができます。さらに、散歩に出て、ペット仲間やペットを散歩させている人に話しかけてみましょう。ペットを飼っている多くの人は、ペットと別れた経験があります。同じような気持ちになった人と話すと、心が癒やされるものです。
ペットは、私たちの生活に潤いや楽しみをもたらしてくれます。家族のように暮らしながらも距離感をもって付き合っていけると、生活がより充実し、ペットロスも軽くてすむかもしれません。
(安藤 はま子/心理カウンセラー)