「学生納付特例」で「猶予」。大切な受給権を守る
日本の年金制度では20歳から加入が義務づけられていますが、収入のない学生の場合、保険料負担はどうしたら良いのでしょうか?
まず、学生の場合は「学生納付特例」が活用できます。これは学生の間の年金保険料を「猶予」、つまり後払いでも良いという、お墨付きをもらう制度です。年金保険料を自分の都合で勝手に納めないでいると「未納」となり、万が一のときに障害年金を受給できないなどのデメリットが生じます。しかし、「猶予」であれば、大切な受給権を失うことがありません。
保険料の後払いは学校を卒業してから10年以内
老齢年金についても、「猶予」期間は受給するために必要な加入期間として認められるので、その点もメリットです。ただし、「保険料を納めていない」ことには変わりがないため、将来の受取額には反映されません。
学生納付特例を受けた人が老齢年金額を増やすには、猶予期間中の保険料を支払う必要があります。保険料の後払いは、学校を卒業してから10年以内という期間が設けられており、この間に保険料を納めれば将来の受取額が減額されずにすみます。ただし、3年以上前の保険料には「金利」分が加算されるので、注意しましょう。
国民年金の前納制度を活用すれば、割引を受けられる
また、支払う際には、国民年金の前納制度を活用することもオススメです。国民年金には前納といって、6か月、1年、2年とそれぞれ前払いすることによって割引を受けられる制度があります。
6か月前納だと割引額は1,040円、1年前納の割引額は3,840円、2年前納の割引額は14,800円にもなります(前年度)。ただし、割引を受けるための申し込みの締め切りは今年は2月27日です。忘れずに手続きしましょう。
親が子どもに代わって保険料を支払うと全額が所得控除に
検討に値する方法として、親が子どもに代わって保険料を支払うという手もあります。例えば、父親が子どもの国民年金保険料を支払うと、父親の社会保険料控除として、支払った保険料の全額が所得控除になります。所得の高い父親であれば、負担する所得税率も高いので、この節税効果はかなりインパクトがあるでしょう。
家庭によっては、「子どもの保険料は子どもに負担させる」というのがモットーというところもあるでしょう。その場合は、子どもが就職してから国民年金保険料を親に返済させるというのも良いかと思います。親としても節税メリットを受けられますし、子どもも将来の老齢年金受給額を確保することができます。
今、学校を卒業しても正社員になれない、なかなか就職できないという人も多いといわれています。その場合、猶予期間中の保険料を後払いしようにも、なかなか難しいのが現状です。それであれば、家族間で最も有利な保険料の支払い方法を検討し、子どもの独り立ちのために支援することを考えてみるのも良いのではないでしょうか?
(山中 伸枝/ファイナンシャルプランナー)