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過去最悪の詐欺被害、背景に「高齢者の孤独感」

JIJICO 2015年2月4日 15時0分

2014年の特殊詐欺被害額が過去最悪を更新

2014年に通報のあった特殊詐欺による被害総額は559億4,354万円に上り、過去最悪を更新したことが警察庁のまとめでわかりました。また、金融機関などが阻止した被害額が296億円余りで、合算すれば855億円分の事件が発生したことになります。

手口別に見れば、架空の投資話や名義貸しを口実にした脅しなどの「金融商品に絡む詐欺」が最も多く、次いで、子どもや孫をかたって助けを求める「オレオレ詐欺」が被害額の半数以上を占めます。「オレオレ詐欺」は現金の受け取り方にも変化があり、宅配便や郵便を使用した「送付型」が激増(81億円増)し、最も多い「手渡し型」と従来の「振り込み型」が減少しました。

警察庁のまとめで特筆すべきは、被害者の79%が65歳以上の高齢者であることです。原因として、相談相手の不在が挙げられます。しかし、警察、金融機関、メディアなどによる啓蒙活動が盛んになっても被害が減少しない理由には、多くの高齢者が抱いている「孤独感」に原因があります。

高齢者被害者は女性が多く、家族と離れて暮らしている

高齢者が被害に遭いやすい特殊詐欺の手口は、「オレオレ詐欺」と「還付金詐欺」「金融商品等取引名目詐欺」の3つで、被害の90%前後を占めています。また、被害者の特徴として女性が多く、家族と離れて暮らしていることが挙げられます。

手口の特徴は、家族や役所、社会保険事務所、警察、金融機関を騙って信用させ、困っていることを主張し、「今日中に…」など時間に制約をかけます。「オレオレ詐欺」では、息子や孫をかたり、このままでは犯罪者になってしまうと主張して、今日中なら間に合うと慌てさせます。これは、「心配」する親心と「役に立ちたい」と思う純粋な心を利用して、判断力を奪うといった人の心理を巧みに誘導する手口です。

被害を防ぐには、犯行グループの手口を学ぶことです。警視庁をはじめ、各道府県警察のホームページでも手口は紹介されています。また、家族の間で小まめに連絡を取り合うことも重要です。詐欺グループの巧みな電話も、共有する情報(晩ご飯のおかずなどでも可)が合言葉として利用でき、撃退につながるのです。

多くの高齢者は年を経るごとに「孤独感」が増していく

被害者の80%近くが高齢者であるのは、核家族化が進んだ現代社会の象徴かもしれません。家族で過ごす時間が短ければ短いほど「心配」は増幅されます。また、歳を重ねるごとに行動範囲が狭くなり、気を許せる友人や知人も身近に感じられなくなって、相談する相手も少なくなっていきます。つまり、多くの高齢者は年を経るごとに「孤独感」が増していきます。

被害に遭う高齢者の多くが、夫婦もしくは一人暮らしの高齢者世帯で生活しているようです。そして、月に1、2回程度、息子や孫をかたって電話をして信用させる犯行グループの存在も報告されています。被害者の多くが女性であることから、母親が息子、目に入れても痛くないほどの孫から危機を告げられ、助けを求められれば「役に立ちたい」と切望するのは当たり前のことです。

「孤独感」は親心を増幅し、冷静な判断も奪ってしまう

もし、コミュニケーション不足で孤独を感じていたならば、疑う余地は無くなってしまいます。つまり、「孤独感」は親心を増幅し、冷静な判断も奪ってしまいます。詐欺被害を減らすためには、注意喚起だけではなく、コミュニケーションを増やして「孤独感」を和らげることも重要なことがわかります。

また、警察庁のまとめでは、金融機関、郵便局、コンビニ等での「声かけ」による水際阻止の効果が上昇しています。特殊詐欺被害の予防は家族だけの問題ではないことがうかがえ、私たち一人ひとりが興味を持ち、被害防止に取り組むことが最も重要なのだと確信できます。

(神田 正範/防犯・防災コンサルタント)

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