国土交通省によると、現在の空き家は約800万戸
最近、「空き家」に関するトピックがメディアを騒がせています。空き家の解決策を探る前に、現状について分析してみたいと思います。
国土交通省の統計によると、現在の空き家は約800万戸あります。この内、約10%が売却中の住宅や別荘です。残り90%の内、約50%が賃貸住宅、約40%がその他住宅、いわゆる放置・老朽建物です。
賃貸用住宅の空き室問題は、設備改修やリノベーションで対応可能
今回は、空き家問題の大半を占める「賃貸住宅」と「その他住宅」に絞って原因と解決策を考えてみます。まず、賃貸用住宅における空き室の原因は大きく2つに大別されます。
(1)募集と契約の期間・条件的ギャップ
(2)間取りや設備のライフスタイルギャップ
その対策として、(1)については、もちろん、その背景に貸主・借主の事情があることは考えておかなければなりません。(2)に関しては、いわゆる設備や間取りの老朽化・陳腐化によるものなので、よほど老朽化していない限りは設備改修やリノベーションなどで対応が可能です。
「住みたい!」と思う街づくりを進めることで一定の解決を図れる
「その他住宅」に関しては、原因が複雑なので、いくつかのケースに絞り解決策を考えたいと思います。「その他住宅」の空き家発生の原因として、要因は多岐にわたりますが、特徴的なものとして3つに大別されます。
(1)そのエリアにおける人口の減少
(2)老朽化などの問題
(3)所有者的問題です。
その解決策として、(1)についてはマクロな問題もありながら、立地やアクセスが影響します。解決法としては、そのエリアのソフトパワーを磨き、人々が「住みたい!」と思う街づくりを進めることで一定の解決することが可能です。例えば、住みやすさや子育てのしやすさなど、データで見えない情報の発信や、それに向けた取り組みなど、さまざままな切り口があります。
(2)老朽化などの問題は、所有者個々人の事情もありますが、固定資産税と連動する関係もあるため政策的なアプローチが不可欠で、また、取り壊し後の空間利用まで事前に検討しておくことが重要です。
(3)に関しては、個々の事由やその土地ごとの問題もあるため、個別の解決策しか無いのが難点です。
解決できるギャップを埋めていけば、不動産が流通し始める
まとめとして、「賃貸用住宅」と「その他住宅」に関して、これら解決できるギャップを一つ一つ埋めていけば、そのすべてではありませんが、今まで停滞していた不動産が流通し始めます。また、それにより購入者層や利用者層に新たな選択肢が生まれ、不動産およびその利用法が多様化し、街やエリアに活気が戻ってくるでしょう。
例えば、今まで「ウサギ小屋」と揶揄されてきた狭い住宅群からの脱却や、新しいニーズを発掘することで、これからの人口減少への対応、新たな起業やビジネスの場所といったものに生まれ変わらせることが可能になります。
不動産は、それぞれが世界に一つだけのものです。所有不動産を「ミクロとマクロ」「ハードとソフト」の観点から改めて見直してみませんか?
(今西 頼久/不動産コンサルタント)