「抱っこひも」の偽造品が出回る。安全基準に満たない粗悪品も
人気ブランドの「抱っこひも」の偽造品が出回っており、中には日本の安全基準に満たない粗悪品も含まれているそうです。東京都では、過去5年間で100件以上、抱っこひもから乳幼児が落ちて怪我をするという事故が起きていたとのことです。
このような安全基準を満たさない粗悪品を使った結果、怪我をしてしまったという場合、製造元や販売元に責任を問えるのでしょうか。
製造物責任法により、欠陥を証明すれば製造元に責任を追及できる
まず、製造元の責任について。この場合、製造元に対しては、製造物責任法という法律の適用があります。これは、製造物(製造又は加工された動産)の欠陥によって被害を負った人を保護することを目的とした法律です。
例えば、前述の抱っこひもの例で、安全基準を満たさない粗悪品を使ってしまったばっかりに、普通に使っているだけでひもが切れて赤ちゃんが怪我をしてしまった場合、民法の規定上は、その製造業者が起きた損害につき、故意または過失があったことが必要になります(民法709条)。
ここでいう「故意」とは「『損害』つまり、赤ちゃんが落下して負傷するという損害を認識しながらそれを容認したこと」で、「過失」とは「赤ちゃんが落下して負傷するという損害を予想することができたのに、それを避けるための努力を怠ったこと」をいいます。要するに、民法の規定上、被害者が製造元から損害賠償を得るためには、製造元が「赤ちゃんが落下して怪我してもいいや。と考えていたか」「赤ちゃんが落下することをわかっておくべきだったのに見逃した」ということを、被害者の側が証明しなければいけないということです。このことは被害者にとって高いハードルとなります。
よって、製造物責任法は、この「故意」や「過失」を立証しなくても、製造物に欠陥があったことを証明すれば、製造元に責任を追及できるという規定になっています。
製品を輸入している販売元も製造物責任法で責任を追及できる
次に、販売元に対してはどうでしょうか。
例えば、販売元が製品を輸入していた場合、その販売元にも製造物責任法が適用されることになっています。これは、輸入品の場合に、日本にいる被害者が海外の製造元を訴えることは現実的に困難のため、被害者保護の観点から、輸入した者が欠陥製品を国内に流通させた点に責任を持たせることにしたものです。したがって、販売元が製品を輸入している場合は、製造物責任法によって上記と同様、責任を追及することができます。
欠陥製品で負傷した分の損害賠償を得られる可能性も
輸入を伴わない販売元の場合、販売元に対しては、契約上の責任が追及できます。消費者は販売元との間で製品に関して売買契約を締結しています。要するに、消費者は製品を購入する意思表示を示して、販売元はそれを売り渡すという意思表示を行い、それが合致したことをもって製品とお金を交換して売買が完了します。
消費者は当然、「欠陥の無い製品を購入する」という意思を示しています。これに対して、欠陥のある製品を売却しても、債務つまり販売元の消費者に対する製品提供義務を果たしたことにはならず、債務不履行ということになります。
そのため、欠陥製品を提供したことにより生じた損害として、支払った代金は当然のことながら、ケースにもよるとは思いますが、欠陥製品を使ったことにより負傷した分の損害についても賠償を得られる可能性はあるでしょう。
(河野 晃/弁護士)