総住宅戸数のうち、13.5%が空き家
入居者募集の看板や、住人を見ない住宅をよく目にするようになり、人口減少の中、住宅が余っていることを身近に感じ取れるようになってきました。
平成25年の調査では国内の空き家が約820万戸に達し、総住宅戸数6,063万戸のうち13.5%を占めています。それでも昨年は89万戸の新築住宅が造られ、空き家の増加に拍車をかけています。住宅の余剰は、適正に管理されない空き家を増加させ、近隣の住環境を悪化させるだけでなく、不動産の実質的価値の格差を助長させています。「売れる・貸せる」住宅と「売れない・貸せない」住宅との色分けが進み、中には「タダでもいらない」という物件も現れています。
近い将来、ゴーストタウン化する地域の出現も懸念
築年数や間取りなど建物の個別的要素で「売れない・貸せない」となる物件もありますが、多くは「立地」に左右され、特に地価の安さに誘引されるように開発された郊外の分譲地戸建住宅やマンション、あるいは別荘やリゾートマンションなどは利便性の低さなどから敬遠されがちです。
「売れない・貸せない」住宅は資産を現金に換金できないだけなく、所有者や相続人へ維持管理費用や固定資産税などの金銭的負担を負わせます。金銭的負担ができず放置される物件も散見し始めており、近い将来、ゴーストタウン化する地域の出現も懸念されています。
新築を抑制し既存住宅を利活用する動きを活発化させる
では、どうすれば良いのでしょうか。まずは、住宅の総戸数(絶対数)をむやみに増やさないことです。平成26年の新設住宅工数が約89万戸だったのに対し解体除去された件数は約11万戸でした。これでは住宅の絶対数が増加し必然的に既存の住宅価値が下落します。
地方都市では、新築住宅の受注を取りたい民間業者の目的と、人口流入を促進したい市町村行政の目的とが相まって、地価の安い郊外の宅地化を進める動きが未だにあり、絶対戸数の増加が継続している地域もあります。新築を抑制し既存住宅を利活用する動きを活発化させることで既存住宅の資産価値を落とさないような働きかけが必要です。
そして、住宅を購入したり借りたりする消費者に対し、住宅余剰や空き家問題について正しくアナウンスすることです。将来、自分が住まなくなった時の実質的な価値を十分に検討した上での購入選択が求められます。また、既存住宅の価値を適正に評価するシステムと安心安全に売買できるコンサルティングシステムを構築させる必要もあるでしょう。
空き家は社会資本と捉え地域社会や行政単位で活用を
すでに郊外に広がっている「売れない・貸せない」住宅は、その利活用を個々の物件で考察するのではなく、地域社会や行政単位での社会資本と捉え面的な利活用を検討すべきでしょう。
例えば、自然災害発生時の仮設住宅や生活困窮者の住まいとして活用し、所有者には事前に登録した上で住宅の維持管理を適正に行えば固定資産税を免除する、といった、これまでにない施策を打ち出す必要があると考えます。
(森田 伸幸/不動産コンサルタント)