厚生労働省が定めた「過労死ライン」の具体的な数値
日本には「これ以上、働いてはいけない」という基準がありません。唯一、働きすぎの基準になるのが厚生労働省が定めた、いわゆる「過労死ライン」です。
【対象となる疾病】
・脳内出血(脳出血)、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症
・心筋梗塞、狭心症、心停止、解離性大動脈瘤
【具体的な時間外労働の数値】
・発症前1か月ないし6か月にわたり、1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働を行わせた場合は、時間が長くなればなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まる。
・発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働を行わせた場合、または発症前2か月ないし6か月間にわたり1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働をさせた場合は、業務と発症との関連性が強い。
月80時間の残業が特殊とはいえないことを指摘する声が多数
この「過労死ライン」の基準は、はたして妥当なのでしょうか。
先日、東京新聞で「若者を食い物にするブラック企業」という特集が組まれ「過労死ラインは月に残業80時間」と紹介されたところ、ネットユーザーからは「月残業80時間以上が過労死ラインなら俺とっくに死んでるんだけど・・・」「俺はもう20回以上死んでる」「月20日働いているとして、1日4時間残業。・・・ありうる」など、仕事の実態として月80時間がそれほど特殊とはいえないことを指摘する意見が多くありました。
「まともな基準」になるための今は過渡期
近年、「KAROSHI」が英語や他言語の辞書にも掲載されるなど、「過労死」が日本の労働環境の苛酷さを表す言葉になりつつあります。
2014年時点で、厚生労働省の統計によると、過去10年ほどの間に過労で自殺する人が10倍ほどに増えており、2013年時点で日本で196人もの人が過労死しています。過労死の歴史を見ていくと、この30年ほどで現在の基準となってきています。現在の基準が最終ではなく、さらに「まともな基準」になるための今は過渡期といえるのではないでしょうか。
(大東 恵子/社会保険労務士)