「無縁化」の原因は少子化と過疎化
近年、テレビなどで「無縁墓」が増えているという報道が目に付くようになりました。現在の日本は、少子化社会。お墓を継ぐ人が減ってきているのが現実です。
そもそも「無縁」とは、どういう状態なのでしょうか。言葉自体の意味からすると、「お墓に縁のある人がいなくなってしまった状態」、簡単に言えば、お墓の持ち主と連絡が取れない状態のことを指します。少子化によりお墓を継ぐ人がいない家庭はもちろん、転居などによって連絡が取れなくなってしまった状態も含まれます。
つまり、跡継ぎが減ってしまっているということだけではなく、都市部への人口一極集中も「無縁化」の原因なのです。
「無縁墓」をめぐる問題に悩む墓地。訴訟に発展した事例も
無縁のお墓は、墓地を管理する側からすると大変な問題です。お墓の手入れをする人がいないため、雑草がはびこり汚れる一方で墓地全体の美観を損ねます。さらに、墓地を維持するための管理料や護持会費が支払われないために墓地経営自体にも支障が出てきます。
無縁化してしまったお墓はいずれ撤去するしかないのですが、撤去するにしても「墓地埋葬に関する法律」に則った手続きが必要ですし、費用もかかります。また、長い間、名義人と連絡が取れなかったお墓を撤去したところ、撤去後に名義人が名乗り出てきて「勝手に撤去された」として訴訟に発展した事例もあり、おいそれと踏み切れないケースもあります。
残った遺骨をどうするのか、日本人の葬送観にもかかわる
日本人の葬送観の根底には、遺骨を大切にしたい、大切にしなければならないという感情があると思われます。人の魂の在り方を表す「魂魄」という言葉がありますが、魂(こん)は天に昇り、魄(はく)は遺骨に宿って地に残ると考えられました。
つまり、遺骨とは、魂の一部でもあるのです。お墓を持つ人は、「無縁になってしまった後、遺骨がどうなってしまうかわからない」という不安を持っています。無縁化したお墓は、美観や管理だけではなく、残った遺骨をどうするか、という問題も抱えています。
都市部で人気、墓石を建てず撤去を伴わない「堂内陵墓」
そこで今、購入希望者が増加しているのが、「永代供養墓」という形態のお墓です。故人や夫婦毎に分けられた納骨室に遺骨を納め、一定期間後に他の人の遺骨と一緒にされる(合葬される)タイプと、始めから合葬するタイプのものに大別されます。
この永代供養墓の発展系が「堂内陵墓」と呼ばれるもので、機械式のビル内に遺骨が安置され、カードをかざすといった方法で、お参りできる場所に遺骨が搬送されるシステムになっています。特に堂内陵墓は、都市部での人気が上がっています。いずれも墓石を建てないため、撤去の心配がありません。
「永代使用」を前提としない「有期限型墓所」も登場
一方、跡を継ぐ人がいなくても「自分が元気に動けるうちは、やっぱりお参りするためのお墓が欲しい」という人もいます。そういった人のために、「有期限型墓所」という形態が登場しました。従来のお墓は「永代使用」を前提としていましたが、有期限型墓所はその名の通り、形としては一般的なお墓ですが、一定期間経過後に遺骨を「永代供養墓」に移す契約を結ぶ方法で、墓石の撤去費も使用料に含まれています。遺骨や墓石の行く末を心配することなく、お墓を持てるとあって、まだまだ数は少ないですが、人気が出てきている新しいお墓です。
お墓の無縁化は、解決することが難しい問題です。対応するための新しい形態のお墓は、これからも求められることになるでしょう。
(二上 昌弘/お墓ディレクター)