歴史的な新卒採用者数。新しい風が社内に吹く
今年4月入社の新卒採用者数が過去最大に達する勢いの業界もあるようです。たとえ、そこまではいかなくても、ここ数年と比べて増える予定の企業が多いのではないでしょうか。
たくさんの新入社員が入社する企業では、新しい風が社内に吹き、企業風土に多少なりとも影響を与えます。私も前職で営業部門に所属している時に、いきなり部門の人数が2倍になるほどの新入社員が入ってきた経験があり、雰囲気が一変したことを思い出します。
育成に時間と手間がかかるため、受け入れを敬遠する管理職も
新卒者が入社するメリットは、変化が生まれることです。マンネリに陥っていたベテラン社員は自身の新入社員当時を思い出し、今までは「新人」と呼ばれていた2年目社員は初めての後輩を持つことで、刺激を受けることができます。また、新入社員に指導するプロセスの中で、マニュアルや業務手順を見直す機会も生まれ、効率化が図られる可能性もあります。
逆にデメリットとしては、育成の時間と手間がかかることです。「ただでさえ忙しいのに…」と指導することを嫌って、新入社員の受け入れを敬遠する管理職さえいます。確かにその気持ちもわかりますが、社会に出たばかりの新入社員の多くは自分より年配の人と人間関係を築くことが苦手ですので、業務を覚えさせるだけではなく、精神的なケアも必要です。それができなければ早期に退職という危険性があります。そうなれば、企業にとっては大きな損失です。
新入社員を教育しないと、いずれレベルの低い若手社員ばかりに
退職まで至らなくとも、新入社員をきちんと指導しないことによって、数年後に大きな問題に発展する可能性があります。それは、人材の質が落ちることです。
大量の新入社員が入った時に、きちんと教育しなければ、その新入社員は十分に成長しないまま後輩を持つことになります。新入社員と接する機会が多い若い先輩社員が育っていないと、当然ながら新入社員も育ちません。その負の連鎖を断ち切れずにズルズルと流れてしまうと、数年後には「暗黒時代」の到来、つまりレベルの低い若手社員ばかりになってしまいます。
「少数にすれば精鋭になる」。新入社員教育の見直しを
加えて、大量の新入社員が入った時によく見受けられるのが、新入社員が手待ち状態になってしまうケースです。業務量と人員の一般的な関係では、「少数にすれば精鋭になる」ということが言えます。余力を残して仕事をする状態が続くと、一時的には楽で良いかもしれませんが、長期的に見ると、成長の速度が鈍くなり年齢相応の実力が身につきません。それは本人にとっても、会社にとっても良いことではありません。
そういう視点で考えると、ただ単にマニュアルを覚えさせたり、いきなり現場に放り出すような新入社員教育ではなく、(1)自分で考えさせる(2)質と量の面で少し高いレベルを要求する(3)精神的なケアを忘れない、という方向性で新入社員教育を見直す必要があります。そして同時に、教育担当者である先輩社員の再教育も行うことが、新入社員教育のポイントとなるでしょう。
(福留 幸輔/組織・人事コンサルタント)