2001年に始まった日韓の通貨スワップ。14年目にして終了
報道によれば、財務省は16日、日本と韓国との間の通貨スワップ協定を延長しないことを発表しました。これにより、2001年7月に20億ドルから始まり、2011年には700億ドルまで拡大した日韓の通貨スワップは、14年目にして終了することとなります。最後に残っていた100億ドルも、2月23日に終了します。
この件につき、麻生財務大臣は、「金融も落ち着き、韓国経済もそれなりの形になってきたので必要ないということで双方で(合意した)。(韓国側から延長の)要請も特になかったので予定通りということだと思った」とコメントしています。この通貨スワップ協定の終了は、日本経済にどのような影響を与えるのでしょうか。
一定のレートで協定相手国の通貨を融通し合う
通貨スワップ協定というのは、各国の中央銀行が互いに協定を結び、自国の通貨危機の際、自国通貨の預入や債券の担保などと引き換えに、一定のレートで協定相手国の通貨を融通し合うことを定めることをいいます。
例えば、ある国の通貨の為替レートが急落すると、その国では貿易の決済などで必要な外貨が不足するため、経済の深刻な悪化を招くことになりかねません。そこで、通貨協定を結んだ国が、為替レートが急落した国の通貨と引き換えに、外貨を一時的に貸し出します。急落した国は、その通貨を使って貿易の決済をしたり、為替介入をして通貨の安定を図り、経済の悪化を回避する仕組みです。
日韓スワップ協定は、実質的に日本による韓国支援の色合いが濃い
日本と韓国が通貨スワップを締結するに至った経緯は、1997年にタイで起こったアジア通貨危機まで遡ります。アジア通貨危機が飛び火した韓国では、韓国ウォンが暴落し「起亜」など韓国を代表する財閥が軒並み倒産状態に陥りました。同年末に韓国がデフォルト寸前にまで追い込まれたところでIMF(国際通貨基金)が介入し、韓国はIMFの管理下で財閥解体などの経済政策の指導を受けることとなります。
このようなことが二度と起こらないように、2001年に日本から韓国への一方向のスワップ取り決め(日本から韓国にドルを供与)が締結され、これが日韓スワップ協定につながりました。つまり、経緯からすると、日韓スワップ協定は、実質的に日本による韓国支援の色合いが濃く、麻生財務大臣による「特に要請がなかったので」という発言の趣旨はその点を踏まえてのことなのでしょう。
日本への影響を危惧する意見もあるが、過度に反応することはない
さて、一般論としていえば、通貨協定の終了により、韓国に進出している日本企業はもちろん、韓国企業と取引をしている日本企業にとっても、韓国に通貨危機が起こった場合は影響を受けることになります。韓国にとっては、通貨危機を回避するための「保険」が一つなくなったことになりますし、日本にとってもカントリーリスクが一つ増えたことになるでしょう。この点を考慮して、通貨スワップ協定がなくなることを危惧する意見も見られます。
とはいえ、遠くはギリシャの出来事も日本経済に影響を与えるほど、世界経済は一つにつながっている時代ですから、すべてのリスクを回避するための策をとったり保険を掛けることは現実的とはいえません。韓国側は十分な外貨準備高を保有しており「通貨スワップ協定がなくても問題ない」としているため、過度に反応することなく、その都度の対応で良いのではないかと考えます。
(西谷 俊広/公認会計士)