社員のペット介護を認めるかどうかは企業の判断が分かれる
近年、犬や猫といったペットを家族と同視する人が増えてきました。ペットが亡くなった時に、人間と同様の葬儀を行う業者もおり、好評を得ています。しかし、ペットを家族同様に扱うのは個人の自由とはいえ、仕事との両立となると難しい問題に直面します。
筆者が実際に体験した事例では、企業が社員に海外赴任を命じた際、ペットの検疫が難しいとの理由で赴任を渋るというケースがありました。その時は海外人事として「業務の必要性」「選任の理由」を説明して合意を得ましたが、そのようなケースが増えています。
例えば、ペットが高齢化して介護が必要になった時、社員に介護を認めるかどうかは企業によって判断が分かれます。「たかがペットで」と考えるのか、「家族の介護で」と考えるのかで、結論も変わってくるでしょう。
育児介護休業法に基づく休暇の使用範囲を広げる
そんな中、育児介護休業法に基づき、子供や介護での休暇が制度化され、対象者が1人であれば年間5日、2人以上であれば10日の休暇設定が企業に求められるようになりました。この育児介護休業法に基づく休暇を、前述のペット介護にも生かすことができます。つまり、育児介護休業法に基づく休暇の使用範囲を子供や親の介護に限定するのではなく、ペットであっても使用可能にするのです。
その際、大事なことは「ペットを飼っている社員」と「飼っていない社員」双方のモチベーションが維持できる職場づくりを意識することです。ペットを飼っている社員だけが厚遇される職場ではなく、例えば育児、親の介護、ペットの介護と多様な条件にも対応できる、安心して働くことのできる職場づくりを通じて、業績向上を目指す姿勢が大切です。
「会社が社員をどのように考えているのか」を示す絶好の機会
ペットロスという言葉を最近よく聞きますが、そもそも大切なパートナーを失ったときのケアを会社として考えると、「会社が社員をどのように考えているのか」を示す機会だと捉えることもできます。会社と社員は、得てして対立の構図で考えられることがありますが、個人的には協働するものだと考えています。
協働するためには、ある一部の人だけがメリットを享受できる制度作りではなく、すべての社員が安心して働けるような運用が効果的です。また、経営者として、会社は社員の家族をどう考えるのかを、きちんと表明することも大切です。
(植田 健太/臨床心理士・社会保険労務士)