口の乾燥感を訴える患者が急増
「口の中がカラカラ」「口臭が気になる」といった悩みを抱える人が増加傾向にあり、その原因としてドライマウスが疑われています。ドライマウスとは、正式には「口腔乾燥症」といい、筆者のクリニックにも口の乾燥感を主訴に来院する患者が増加しています。
それらの患者の多くは、唾液は正常な量が分泌されているものの、「口の中がすぐに渇く」「口の中のネバネバする」などの症状を自覚しているケースです。また、「舌がザラザラする」や「舌先がヒリヒリする」「口臭が強くなった」などの症状を併せて訴える人もいます。
自覚症状がなくとも、「パンが食べにくい、飲み込みにくい」「最近、口の中がネバネバする」「口臭が強くなった気がする」「味覚がおかしい」「目や皮膚が乾く」などに該当する人は注意が必要です。
ドライマウスの原因は一つではなく、複数が関連する場合も
ドライマウスの原因は下記の通り、実にさまざまです。
1)薬の副作用によるもの(抗うつ剤、利尿剤、血圧降下剤など)
2)糖尿病など内科的疾患によるもの
3)シェーグレン症候群 (唾液腺、涙腺などが萎縮し機能低下する自己免疫疾患)
4)加齢変化(口や顎の筋力が低下や萎縮による唾液分泌量の低下)
5)ストレス(ストレスや緊張により交感神経が刺激されて、唾液分泌が抑制されることによる)
6)「口呼吸」(鼻炎などで鼻が詰まり、口で呼吸をすれば唾液は蒸発)
原因が一つではなく、複数が関連しているケースも見受けられます。原因によって当然、治療方法も変わるため、まずは専門医療機関を受診し、原因の特定を行う必要があります。最近では特に、「薬の副作用」「内科的疾患」「ストレス」によるドライマウスが増加傾向にあると考えられています。
原因を特定して適切な治療を行う必要がある
原因が分かればそれに対する改善を図りますが、多くの場合は生活指導や対症療法が中心となります。シェーグレン症候群の場合は、サリグレンという唾液の分泌を促進する内服薬があります。別の薬の副作用により口渇を生じている場合は、処方した担当医師の協力があれば、他剤に変更するなどで改善する場合もあります。
薬が変更できない場合や、原因が不明なドライマウスの場合は、乾燥感を緩和するため保湿性分を含有したうがい液や洗口液、保湿用のジェル、人工唾液スプレーによる噴霧、白虎加人参湯などの漢方薬を症状に応じて処方し、投与します。単に水分を補給するように意識することが有効な場合もあります。何にせよ、患者本人が原因を特定することは難しく、症状を感じれば歯科や口腔外科、耳鼻咽喉科などが専門科になりますので、相談することをお勧めします。
(飯田 裕/歯科医)