製造過程が似ているテンペと納豆、その違いは発酵に使う菌
インドネシアの伝統的な発酵食品「テンペ」が、テレビで紹介されて話題になっています。あまり馴染みがないかもしれませんが、テンペの製造・加工に積極的に取り組んできた岡山では、スーパーでも販売されている一般的な食品です。
テンペは、大豆が原料の発酵食品です。大豆の発酵食品といえば、日本において馴染みが深い「納豆」があります。納豆とテンペは、製造過程で似ている部分が多いのですが、発酵に使う菌が異なります。納豆は納豆菌という菌、テンペはテンペ菌によって発酵されます。この菌の違いが、テンペと納豆の大きな分かれ道です。テンペは無味無臭に近く、納豆のように糸をひかないので料理がしやすく、食べやすいのが特徴です。
免疫器官として大きな役割を持つ腸、その働きを改善するテンペ
テンペを常食していると「健康に対するさまざまな効果があった」という報告がありますが、その理由になっているのは、腸内環境の改善だと思われます。テンペには抗菌作用があるとされ、テンペ菌が腸に達すれば腸内細菌のバランスが整い、悪玉菌が増えにくい状態になります。
テンペなどの発酵食品は善玉菌を多く含み、今話題となっている「腸能力」を向上させることができます。では、なぜ腸の働きが良くなるだけで、健康面にさまざまな恩恵があるのでしょうか。それは、腸が体内で担っている役割を見れば分かります。
私たちの「腸=腸管」は、食べ物を消化・吸収する器官であるほか、「免疫器官」としての仕事もこなしています。腸管はテニスコート一面分にもなる表面積があり、人の体で大きな割合を占める免疫器官です。腸内に張り巡らされている神経網はほかの臓器よりはるかに多く、その数は脳に次ぐと言われています。
さらに近年では、腸と脳の結びつきも注目されており、特に神経伝達物質のセロトニンは、その多くが腸でつくられているといわれています。ストレスで緊張するとお腹の調子を崩すことがあるように、腸と脳の働きはリンクしているのです。
腸内環境を整える善玉菌と食物繊維をあわせ持つ「腸能力フード」
先にも述べたように、腸は食べたものを体内に吸収する大切な器官です。ある意味、体外と体内を結びつける大切な入り口といえるでしょう。
そして、腸内環境が良好でなければ、体の外に老廃物をしっかりと出すことができないということも忘れていけません。腸は不要な老廃物を便として体外に排泄する、とても大切な器官です。この働きが弱まれば体内に毒素が溜まってしまい、健康に大きな影響を及ぼします。
テンペは、発酵食品であるうえに食物繊維も豊富に含んでいます。腸内環境を整えるための2つの大切な要素、善玉菌と食物繊維を併せ持った「腸能力フード」と呼べるでしょう。春に向けて体調を崩しやすい時期です。テンペを食べて「腸能力」をアップし、元気に毎日を過ごしましょう。
(早川 弘太/健康コンサルタント)