感情をしっかり感じ切ることでストレスを体の外に流す
みなさん「涙活」という言葉を知っていますか?2013年1月に、「涙活」プロデューサーの寺井広樹さんがスタートさせた涙を流すイベントです。大人気のこのイベント、参加希望者のうちの4割が男性だそうです。男女の格差をなくそうという社会背景の中で、男性も人前で躊躇(ちゅうちょ)せず涙を流すことを求める時代になってきたのでしょうか。
現代は大人も子どもも多くのストレスを抱えています。ストレスをためることは、自律神経が乱れたり免疫力が低下したり、健康に影響を与えます。また、日常生活で我慢することが多ければ、感情を素直に出すことが苦手になっていきます。涙を流すことは「心のデトックス」といわれますが、悔しいときや悲しいときに一人でひっそりと泣き、小さな子どもであれば大声でわめき散らしたなどの経験は多くの人が持っています。泣いた後、すっきりするのを感じたことがあるでしょう。
人は感情をしっかり感じ切ることで、ストレスを体の外に流すことができるのです。また、涙を流すことは脳や心をリラックスさせ、緊張から解き放たれることで気持ちをリセットしやすくなります。
心を揺さぶられるような感動を「涙活」で得る
「涙活」イベントでは、泣ける映画や朗読によって意識的に涙を流す場面を提供してもらえるようです。人が「涙活」を求めるのにはさまざまな理由があると思いますが、心を揺さぶられるような感動を欲しているのは間違いないようです。
イベントには、涙を流すような出来事や人の生きざまなどに心をひかれ、その思いに浸り、勇気をもらうという目的があるようです。イベント参加によって、感動や興奮を共有することで、その場はより盛り上がりますが、最終的には個人的な活動につながってきます。
映画や小説で美しいものに触れることで、他者に感動を与える人に
最近、私の周りでも「涙活」の一環なのか、感動小説を読むことがひそかにブームです。20代、30代の人が仕事や人間関係に疲れて心が枯渇したときに読みたくなるそうです。現実では、映画や小説のような感動的なシーンや憧れの人にはなかなか出会えません。スピーディーで情報に埋もれた生活のなかでは、感性も育ちにくいといえます。
パソコンのゲームなど、バーチャルの暴力的な面が現実に投影されるのは問題ですが、たとえ小説や映画の中だけの経験であっても、「普遍的な愛」など美しいものに触れることによって、自らも他者に感動を与える人になろうとすることはできます。「涙活」が表面的なブームに収まることなく、世の中に良い影響を与え続けていってほしいと願います。
(北見 由紀/心理カウンセラー)