「追い出し部屋」から新しい展開、驚愕のリストラ方法が登場
リストラとは、企業が環境の変化に柔軟に対応し、事業を効果的に再構築することをいいます。しかし、「会社をリストラされた」「リストラが怖い」といった声を耳にすることがあるように、「労働者の首を切る」という意味合いが世間では浸透しています。
社員の自主的退職を促す「追い出し部屋」など、あの手この手のさまざまなリストラの方法が講じられる中、新しいリストラ方法が登場しました。それが、「人材紹介会社へ丸投げリストラ法」です。
人材紹介会社へリストラを丸投げ
この「人材紹介会社へ丸投げリストラ方法」とは、まず会社側がリストラをしたい対象労働者を、業務支援やスキルアップの名目で人材紹介会社へ出向させます。そこで、適正検査や適当な名目でテストを受けさせ、ある診断結果を伝えます。要は、別フィールドでの可能性やスキルアップのためのアドバイスを伝えるのです。
「あなたには○○の才能もありますよ」「営業のスキルに加えて、PCスキルを身につけるために転職したらさらに可能性が広がりますよ」など自尊心をくすぐり、表面上ではプライドを傷つけることもありません。会社側からは、労働者へ退職勧奨することなくノータッチで自主的退職を促すことができるのです。
ここで、退職勧奨について説明しておきます。会社による退職勧奨は、その行為自体が違法となるものではありません。しかし、その様態や頻度が悪質であったり、許容される限度を超えたりする場合には違法となり、労働者は会社に対し損害賠償を請求できる可能性もあります。退職には、あくまで労働者の自由意思が確保されていなければなりません。退職勧奨による退職には、労働者の合意が必要であり、なおかつ合意が脅迫によるものでないことも重要になります。
労働者がリストラされたことに気づくとトラブルに発展の可能性も
労働契約行為は本人の意志が重要になります。入社・退社に関しては労働者本人の意志が尊重されるのです。新リストラ方法では、労働者自らが自分の可能性を信じ退職の意思表示をしているので、労働法の介在する余地はありません。
そもそも会社側から労働者へ退職勧奨もしていないのです。労働者が退職の意思表示をした時点で、労働基準法、労働契約法の観点からみると違法ではないといえます。ですが、労働契約が解除された後に、労働者が我にかえり、仕組みに気づいたときにはトラブルになることもあるでしょう。
新リストラ方法がどの程度浸透しているのかは、まだ具体的な数字が出ていないので把握できません。違法性がないからといって、推奨される方法ではありません。リストラや解雇は労使にとって目を背けたくなるような問題です。だからといって他機関に丸投げするのではなく、労使が納得できる方法をとことんまで話し合う必要があると考えます。
(大東 恵子/社会保険労務士)