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外れ馬券購入費は「経費」、確定の影響

JIJICO 2015年3月4日 10時0分

競馬の利益を申告せず、所得税法違反に問われる

競馬の外れ馬券購入費が「経費」として認められるかが争われた脱税事件について、最高裁判所が弁論を開かず、3月10日に判決を言い渡すことが決まったとの報道がありました。最高裁判所において、高等裁判所の判断を変更する場合には弁論を開きますが、今回は弁論を開かず判決を言い渡すこととなったため、2審の判断が維持される見込みであるといわれています。

この事件は、独自の競馬予想ソフトを使ってインターネットで馬券を購入していた男性が、得た払戻金を申告せず、約5億7000万円を脱税したとされる事件です。報道によると、男性は2007年から2009年の間に、約28億7000万円を賭けて、約30億円の利益を得ていましたが、これを申告しなかったため所得税法違反に問われたものです。

外れ馬券が「経費」として評価された

本件では、国税当局が外れ馬券を経費として認定せず、掛金と利益の差額より課税額が高額になっていましたが、1審、2審ともに外れ馬券の購入費用を「経費」として認定し、脱税額を大幅に減らしたために検察側が上告していました。

2審の判断が維持された場合、どのような影響があるのでしょうか。これまで、税法の分野では国税庁の通達が極めて重要な意味を有していましたが、本判決は通達に時代遅れの誤りがあったことを明らかにした点で、今後の税務訴訟において一定の影響はあると思われます。

しかし、大規模かつ反復継続的に馬券を購入しており、1審において指摘されるように「娯楽の範囲を超え、営利目的の継続的な資産運用とみることができる」ことから、外れ馬券を「経費」として評価したと考えるべきです。

無条件で競馬の外れ馬券が経費になることを認める訳ではない

一般の競馬ファンが「一時の娯楽として」馬券を購入する場合には今回の判決は妥当せず、判決を前提としても、払戻金はあくまで「一時所得」として扱われることになり、外れ馬券も経費として認定されることはないでしょう。

その意味では、本判決は一般の競馬ファンに対しては、何の影響も及ぼさないものだと思われます。最高裁判決が1審、2審を指示したとしても、全ての場合に競馬の外れ馬券が経費になることを認める訳ではありませんので、くれぐれもご注意ください。

(半田 望/弁護士)

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