最高裁では一審判決を正当との判断を下した
先日、大阪市の水族館に勤務する課長代理の職にあった2人が、女性従業員に対してセクハラ行為を行ったとして、それぞれ会社から30日ないし10日の出勤停止の懲戒処分などを受けました。それに対し、2人は処分の無効確認を求める訴えを起こしました。一審の大阪地裁は訴えを棄却しましたが、大阪高裁はこれを認容。これに対して会社は上告していましたが、最高裁では一審判決を正当(会社の処分は正当)との判断を下したのです。
なお、セクハラの具体的内容は、約1年あまりにわたり、女性従業員に対して他人の性生活や自分の性器の話をしたり、「30歳は22、3歳の子から見たら、おばさんやで」「(給料が足りないから)夜の仕事とかせえへんのか」などと話したというものです。
最高裁は処分が懲戒権の濫用には当たらないと判示
高裁が加害者らの請求を認容した理由は、「1.女性従業員が明確な拒否の姿勢を示さなかったので、許されていると誤信していた」「2.処分の前の事前警告や注意がなかったため、懲戒解雇の次に重い出勤停止処分は酷に過ぎ、処分は権利濫用」とのことでした。
これに対して最高裁は、1について「被害者は不快感や嫌悪感を持ちながらも職場の人間関係悪化を懸念して抗議しにくい」、2については「加害者らは管理職であり、会社のセクハラ方針や同研修などの取組を当然に認識すべきであったこと、多くが第三者のいない状況において行われていたので、警告などを行う機会がなかった」などとし、加害者らに有利に斟酌(しんしゃく)し得る事情はないと判断。企業秩序や職場規律に看過し難い有害な影響を与えたため、処分は懲戒権の濫用には当たらないと判示したのです。
指導的立場にあった管理職ということで厳しい判断となった
今回の最高裁判決は、管理職によるセクハラ行為に対して厳しい判断を下したものといえます。セクハラ行為には、性的な要求が受け入れられない場合に不利益を課す「対価型」と、職場の就業環境を害する「環境型」がありますが、今回のセクハラは後者に該当します。
この場合、一般的には高裁判決が主張するように、懲戒処分は注意や警告などを経ても言動が是正されない場合に認められるものです。しかし、本件では会社がセクハラ研修をしっかり行っており、その中で他の従業員に対して指導的立場にあった管理職がセクハラを行ったということで、加害者(管理職)にとっては厳しい判断となったものと思われます。
(山下 江/弁護士)