「残業は減らさなければならない」。改革賛成派も反対派も
ホワイトカラーエグゼンプション制度の導入や、裁量労働制の対象者拡大などを含む労働法の見直しが進む中、改革賛成派と反対派がネットやテレビなどで論争を繰り広げています。
賛成派は「少子高齢化による労働力の減少を補うため、効率の良い働き方を広げるためにも改革は必要」と主張し、反対派は「さらなる長時間労働を助長し、過労死やうつの増加につながる」と反論し、両者の意見は平行線のままです。ただ、どちらも「残業は減らさなければならない」という点については意見が一致しているようです。
では、どうすれば残業は減るのでしょうか?まず残業は大きく分けて2種類に分類されます。ひとつは、給料を補うために自ら進んで行う残業。もうひとつは、本意ではないが、仕事が終わらないためにせざるを得ない残業です。
「本意ではない残業」に苦しめられている人が多いのが現状
自ら進んで行う残業は「ダラダラ残業」などと呼ばれ、日本企業にはびこる悪癖のひとつに挙げられます。「通常の給料だけでは生活が苦しいので、残業代を稼ぎたい」という気持ちは理解できますが、会社にとっては不要な人件費の増加につながり、まわりの社員にとっても、定時で帰りにくい社内雰囲気の醸成につながるため、あまり歓迎されません。
しかし、実際は「ダラダラ残業」をしているような人は少数派で、多くは2つ目の「本意ではない残業」に苦しめられているのではないでしょうか。この「本意ではない残業」ですが、まず繁忙期のあるなしに関わらず一年中残業が続き、周りの社員も全員残業を強いられているような場合は、会社が適切に人材を補充するなり、業務の割り振りを見直すなどの対策をとらない限り、個人で改善することは困難です。
一方、同じ業務に取り組んでいるにも関わらず、きっちりと仕事をこなし、残業もほとんどしない社員が他に存在する場合は、個人の業務の進め方に問題がある可能性があります。
仕事ができる人は、優先順位を上手につけてロードマップを構築
では、仕事を効率的に進める人と、そうでない人の違いはなんでしょう。もちろん個人の能力差もありますが、単純な能力差だけを見た場合、世界一の人と普通の人の差は二割もないといわれます。
仕事ができる人とできない人の一番の違いは、時間の使い方です。仕事ができる人は、その仕事内容の「重要度」や「緊急度」などに応じて仕事を分類し、優先順位を上手につけているのです。また、内容に応じて、「この仕事はいつまでに仕上げなければならない」といったロードマップが、きちんと頭の中で構築できています。結果、優先度の高い仕事から集中的にこなすことで、期限前に慌てることなく余裕をもって仕事を納めることができるのです。また「明日できることは、無理に今日しない」といった、良い意味で力の抜けた働き方ができ残業時間も自ずと少なくなります。
慣れない人はグラフやスケジュールなどを利用して目視できる形で
一方、仕事のできない人は、目の前にある仕事からとりあえず片づけようとするため、期限間近になっても重要度の高い仕事が終わっておらず、結果、遅くまで仕事をし、なんとか終わったと思ったら、すぐ次の仕事の期限に追われるという悪循環に陥ります。
こういった優先順位づけが、自然と頭の中でできる人が「能力が高い」ということにもなるのでしょうが、慣れない人でも、グラフやスケジュールなどを利用して、目視できる形で自分の仕事を整理し、優先順位とロードマップを作成してから進めるようにしましょう。慣れてくると、頭の中で数多くの仕事を優先順位順にソートすることができるようになります。
(吉田 崇/社会保険労務士)