リベンジポルノ防止法の制定後、初の逮捕者が
「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」。いわゆるリベンジポルノ防止法が昨年11月に制定され、先日、初めてこの法律を適用した逮捕者が出ました。リベンジポルノをめぐってはさまざまな問題があり、既存の法体制では被害回復や処罰が難しく、その一部をカバーするために制定された法律です。
そうした背景から考えれば、「プロバイダ責任制限法」の特例をつくって画像をできるだけ早くWEBから削除できる手立てを講じていること、被害者の支援体制の整備を謳っていること、公表の目的で少数に提供をした場合にも罰則が科せられるようになったことなど、評価できる点はあります。
リベンジポルノ防止法の課題
しかし、今後検討すべき課題も考えられます。一つは、定義の問題です。リベンジポルノ防止法で対象となったものは、「1.性交・性交類似行為」「2.他人が撮影対象者の性器等を触る行為、又は撮影対象者が他人の性器等を触る行為で性欲を興奮、刺激するもの」「3.衣服の全部又は一部を着けない姿態で、殊更に性的な部位が露出され又は強調されているもので、かつ、性欲を興奮、刺激するもの」のいずれかのデータ、及びデータが保存された媒体のうち、第三者に見られることを認識せずに撮影したものです。
しかし、一方で処罰されるのは、対象を「第三者が撮影対象者を特定できるような方法」である場合に限っています。個人の名誉は確かに守られるかもしれませんが、私生活の平穏についてはどうでしょうか。当人が自分自身の写真だとわかれば、いつ顔までさらされてしまうのだろうかと不安な思いを抱くでしょう。
切り札となるには、さまざまな課題克服が求められる
確かに被害者を正確に特定するためには「第三者からでもわかる」という要素が必要です。しかし、二次被害に遭うということだけは避けてほしいものです。現時点で被害者が告訴しやすい体制の整備について具体的な方策が決まっているわけではありませんが、被害者に対しての配慮を忘れない相談窓口の設置が求められます。
さらに、課題として第三者に見られることを認識しているものであれば、対象にならないという点も挙げられます。第三者でも一部の特定集団に見られることを認識しているものの、広くネット上などで公にすることまでは認識していないことも考えられます。この法律は恋愛関係にあるもの同士に縛られておらず、オーディションでの下着姿をネットにアップされるという可能性も否定はできません。
また、特定された少数の者への提供については、公表目的の場合にしか処罰ができないという点。被害者からしてみれば、公表されなくても上に述べたような写真が他人に渡っただけでも、辛い思いをするはずです。例えば、元交際相手が腹いせに自分との性行為を撮影した写真を被害者の今の交際相手に送ったとしたら、女性としてはやりきれない思いになるでしょう。このように切り札になるにはさまざまな課題もありそうですが、今後の議論でこのような問題を克服していくことが期待されます。
(白木 麗弥/弁護士)