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夫のDVをねつ造する浮気妻の実態、問われる罪は?

JIJICO 2015年3月13日 17時0分

浮気やDVを証言する「だけ」では裁判所は認めてくれない

離婚の原因として不貞行為(いわゆる「浮気」)、家庭内暴力(いわゆる「DV」)は一般的にも認知されていることだと思います。配偶者の一方が、浮気やDVを行った場合、通常、そのことが原因で婚姻関係が破たんしたと評価され、当該配偶者が離婚を望まない場合であっても裁判離婚が認められることになります。また、その場合、離婚の原因を作った代償として慰謝料の支払い義務が発生します。

この浮気とDVですが、どちらとも誰が見ても明らかとわかる確実な証拠を獲得することは決して容易ではありません。なぜなら、確実にこれらを行った証拠を獲得するためには、性行為そのものや配偶者から暴力を受ける場面の録画などをしなければいけないからです。離婚をしたい当事者が「相手は浮気をしていました。それを私は見ました」「相手から暴力を受けました」と証言する「だけ」では、裁判所がそれらの事実を認めてくれることはありません(もちろん、相手が認めた「自白」の場合は別です)。

DVシェルターを悪用すれば、簡易に「DV冤罪」ができてしまう

しかし、離婚の裁判とは異なり、比較的、簡単にDVを認めてもらえる場所が存在します。それは、「DVシェルター」と呼ばれるDV被害者を保護する施設です。ここは文字通り、DVの被害に遭っている人を一時的に保護する施設です。実際に身に危険が迫っている状況にある人が訪れるため、ちくいち証拠を提示しないと保護されないとなると意味がありません。基本的には、「被害に遭っている」という一方的な申告により保護されます。

さらに言えば、わざと打ち身のあとなどを作って「配偶者の暴力によりできた」と申告すれば確実に保護してもらえるでしょう。その後、裁判所に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(いわゆる「DV防止法」)」に規定されている保護命令を申立てて、裁判所からお墨付きを得られれば、「DV冤罪」のでき上がりです。通常の裁判と比べれば、かなり簡易な手続きで保護命令を認めます。例えば、場合によっては加害者とされる側の言い分を聞かずに決定を出すことも法律上、認められています。

弁護士が助言してDVをでっちあげるケースも。刑事罰の可能性

このように、「DVを受けた」と虚偽の申告をすれば、意外と簡単に裁判所を騙せてしまう可能性があります。そのことを逆手に取り、実際に浮気をした妻が確たる証拠が無いのを良いことに、夫からDV被害を受けていると主張するような事例も実際に有り得ると思われます。信じたくない話ではありますが、離婚を有利に進めるために弁護士が助言をして、相手のDVをでっちあげるようなケースもあるといわれています。このようにありもしないDVをでっちあげる行為は、当然違法です。

保護命令の際に虚偽の申告をした場合には「10万円以下の過料」、裁判で虚偽の証言をした場合も同様の罰が与えられます。また、極端な例に限られるかとは思いますが、DVの態様などの表現方法により名誉棄損罪が成立する場合もあります。また、裁判所に対して嘘をついてお金を請求したと明らかに認められる場合には、詐欺罪が成立する可能性も有り得ます。

DVのでっちあげに対して詐欺罪や名誉棄損が成立し、刑事罰が科されるケースは稀だとは思いますが、そういった嘘をつくよう弁護士に助言されたという場合、そのような人に事件処理を依頼すべきではないと私は思います。

(河野 晃/弁護士)

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