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改正派遣法の廃案で「直接雇用」を迫られる企業が続出?

JIJICO 2015年3月17日 11時0分

過去に2度も廃案の労働者派遣法改正案、今回も成立が危ぶまれる

政府が提出する労働者派遣法改正案は、早くも今国会での成立が危ぶまれています。労働者派遣法改正案は、過去に2度も廃案となっていますが、いずれも身内のミスが原因で自滅した格好でした。

今回も、厚生労働省の担当課長が派遣労働者を「モノ扱い」する発言をしたことで野党は攻撃を強めてきており、厳しい状況となりそうですが、政府としては、現場を混乱させないためにも改正派遣法案をどうしても成立させたいところです。

10月以降、違法派遣を受け入れていたら、派遣先が直接雇用へ

2012年の改正派遣法の中で、3年間の猶予期間が設けられた「労働契約申し込みみなし制度」が平成27年10月から施行されることになっています。労働契約申込みみなし制度とは、派遣先が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、違法状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対して直接雇用の申し込みをしたものとみなす制度です。

実際には申し込みをしていなくても、自動的に派遣先の会社が派遣労働者に対し、労働契約の申し込みを行ったことになり、雇用する義務が生じることになります。ただし、派遣先などが違法派遣に該当することを知らず、かつ知らなかったことに過失がないときは、この制度は適用されません。

改正案が成立しなければ、派遣労働者が正社員雇用を求める可能性

みなし制度が適用される違法行為のひとつに「派遣期間の制限に抵触する派遣」がありますが、今回、派遣法改正案が成立しなければ、10月以降、派遣労働者が「専門業務の範囲を超える仕事をやらされ、期間制限に抵触している」と訴え、派遣先企業に正社員として雇用を求めてくる可能性があるということです。

みなし制度が適用される違法派遣の種類としては、(1)派遣期間の制限に抵触する場合、(2)偽装請負(または偽装出向)の場合、(3)無許可もしくは無届の派遣会社から労働者の派遣を受け入れた場合、(4)労働者派遣禁止の業務に派遣労働者を従事させた場合、の4つがあります。

違法派遣をしたことにより、労働契約の申し込みをしたものとみなされた派遣先などは、違法派遣が終了した日から1年間は、申し込みを撤回することはできません。違法派遣を終了して1年を経過する日までに派遣労働者から承諾する旨または承諾しない旨の意思表示を受けなかったときは、申し込みは効力を失うことになり、労働契約は不成立となります。また、派遣先が直接雇用の申し込みをしたとみなされる場合、申し込みをしたとみなされる時点における派遣労働者の労働条件と同一の労働条件となります。

派遣先は、法令順守の社内体制を構築する必要がある

このように労働雇用申し込みみなし制度の施行は、違法派遣をなくすためのものであるわけですが、派遣先に大きなリスクがあるため、新たな派遣会社を選ぶ場合でも、現在の派遣会社との付き合いを存続する場合であっても、慎重に契約を締結しなければなりません。

今回の派遣法改正案が廃案になるかに関係なく、今すぐに派遣業務の範囲、実際の仕事内容、派遣期間について派遣契約ごとに、ひとつひとつ詳細を確認し、労働者派遣法を順守する社内体制を構築する必要があります。

(庄司 英尚/社会保険労務士)

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