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ノンアルビールで特許訴訟、勝敗を分ける争点は?

JIJICO 2015年3月20日 9時0分

サントリーが、ドライゼロの販売差し止めを訴え

先日、サントリーが、アサヒビールに対し、特許権を侵害しているとして、ドライゼロの販売を差し止める訴えを起こしたとの報道がありました。これに対し、アサヒビールは、特許権が無効であるとして争う構えのようです。

特許権侵害訴訟(差止請求)では、原告であるサントリーが、(1)特許権を有していること、(2)アサヒビールが実施していること、(3)その実施が(1)の特許権を侵害することを主張立証する必要があります。損害賠償を求める場合は、(4)アサヒビールの実施によってサントリーに損害が生じたことを追加することになります。

サントリーは特許権侵害の主張立証に自信?

サントリーが訴えを提起するということは、事前の調査によって、(2)(3)の立証にある程度の自信があるからだと普通は考えられます。(2)(3)の検討が不十分なまま提訴することは、特許権侵害訴訟においては一般的にはないでしょう。

そうすると、アサヒビールが、特許権侵害がないとして請求棄却に持ち込むには、主に(2)(3)を真偽不明に追い込めば良いとはいえ、そう簡単にはいかないと思われます(冒頭の報道によれば、アサヒビールは強く非侵害を主張していないようにも見えます)。

特許権が無効か否か。訴訟の勝敗を分ける中心的な争点に

次にアサヒビールが主張する特許権無効を見ていきます。一般に「特許無効の抗弁」といわれるもので、前記(1)に対する抗弁です。特許権が存在していても、それが無効であれば、その特許権に基づく請求はできません。ですから、特許権の無効をアサヒビールが立証できれば、請求棄却になります。

ところで、いったん成立した特許権の無効を求めるには、原則としては、特許庁に対して特許無効の審判を申し立てる方法によります。これは、技術的知見のある特許庁に無効か否かの第一次的判断をさせることが妥当であるからです。特許無効の抗弁は、無効審判を経ることなく、侵害訴訟に抗弁として提出するもので、判例で認められ、その後、明文化されるに至っているものです。もちろん特許無効の抗弁を主張しつつ、別に特許無効の審判を申し立て、両にらみで手続きを進めていくこともあります。

報道による限りでは、サントリーの特許権が無効か否かがこの訴訟の勝敗を分ける中心的な争点になりそうです。なお、報道からは必ずしも明確ではありませんが、被告としては、特許無効以外にもいくつかの抗弁が考えられますので、アサヒビールがそれらを主張するのかどうかも興味のあることころです。

(長谷川 武治/弁護士)

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