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目標は男性産休取得率80%、残された課題とは?

JIJICO 2015年3月25日 17時0分

男性の産休取得率を2020年までに80%とする目標を掲げる

3月12日に政府が示した「少子化社会対策大綱」の原案によれば、配偶者が出産した直後の男性の休暇取得率を2020年までに80%とする目標を掲げています。男性にも「産休」を取得してもらい、出産・育児に参加させることで、少子化に歯止めをかけたいようです。

そもそも「男性が産休を取ったら出生率が上がるのか?」という根本的な問題はさておき、少なくとも出産・育児という一大事を、パートナーと協力して乗り越えられるという安心感は生まれることでしょう。男性が気兼ねなく産休を取り、今よりも出産・育児に積極的に参加できるような社会を本気で目指すならば、どのような取り組みが必要なのか考えてみたいと思います。

産休に直面した中小企業に対し今より手厚い金銭サポートを

まず、男性が産休を取る以前の問題として、女性ですら「産休を取りたい」と言い出しにくい状況を改善する必要があります。人材と資金に余裕のある大企業や公務員なら、産休は労働者の権利として受け入れられ、取得しやすいでしょう。しかし、いくら法的に認められた権利とはいえ、ギリギリでやりくりしている中小企業にあっては、スタッフが一人抜けるということはかなりのダメージとなります。求人難の昨今にあっては、代わりの人員を補充することも難しいでしょう。女性の産休取得が進まなければ、もちろん男性の休暇取得率も上昇しません。

それなりの経験と技術をもった従業員を、妊娠・出産が理由で退職に追い込むような事態をさけるために政府ができることは、従業員の産休や育児休業に直面した中小企業に対して、今より手厚い補助を行うことではないでしょうか。助成金・補助金など、経済的体力のない中小企業を金銭的にサポートする体制づくりが必要です。

働く人の「出産・育児は女性の仕事」という意識改革も必要

次に大切なことは、働く人の「出産・育児は女性の仕事」という意識を改革することです。「イクメン」という言葉があるように、今は男性の育児参加も一昔前より進んでいます。しかし、社会のどこかに「子どものことは母親が対処する」という潜在意識が残っており、男性が仕事そっちのけで育児に走ることを良しとしない雰囲気があることは確かです。

女性の社会進出が進む北欧では、男性が短時間勤務で働き、子どもを学校へ迎えに行くといったことが「ごく普通に」行われているそうです。平日の午後3時に男性が住宅街を子連れで歩いていると、日本ではまだまだ珍しい風景として捉えられてしまうでしょう。

子育てに関して、「男性が、女性が」といった性別による役割分担を意識せずにすむ社会になることができるのか、それは社会全体の意識改革が鍵になってきます。

現在でも、仕事と育児両立支援を積極的に行う企業を認定し、税制面などを優遇する「プラチナくるみん」といった制度が運用されていますが、いまいち認知度が高くありません。高齢化に伴い国の社会保障費は毎年右肩上りで上昇していますが、次世代を育み、将来の社会を土台から支えるために投資することは、何よりも優先されるべきだと考えます。

(大竹 光明/社会保険労務士)

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