教職員だけの対応に限界が生じる
学校現場では不登校やいじめなど、いつの時代も子どもを取り巻くさまざまな問題がありました。筆者自身が子どもの頃も同様の問題はあり、その度に教職員が家庭訪問をするなど、親身になって対応をしてくれました。
しかし、現代の子ども問題は、教職員だけの対応に限界が生じ、学校現場ではこれまで配置されてきたスクールカウンセラーに加え、スクールソーシャルワーカーの活用を進めるようになってきました。
福祉・医療機関などへの同行、代弁なども行う
スクールソーシャルワーカーとは、2008年度から文部科学省が取り組み始めた事業です。カウンセリングは本人の心の葛藤に視点を置き、受容、傾聴的態度で接することによって本人の心の葛藤を解消する支援方法です。しかし、不登校の原因が虐待であったり、家庭の経済状況、本人の発達障害等であった場合、カウンセリングで本人の心の葛藤にはたらきかけたとしても不登校への解決とはなりません。
一方、ソーシャルワーカーは本人が抱えている問題の原因が環境にあるという観点で介入し、本人と福祉・医療などを結びつけることによって問題を解決していきます。カウンセラーは原則カウンセリングルームから出る支援を行いませんが、ソーシャルワーカーは家庭訪問だけでなく、福祉・医療機関などへの同行、子どもが何を求めているのかの代弁なども行います。
状況に応じた活用が望まれる
教育の現場に福祉の専門家が入ることにより、家庭環境と行政機関・社会資源を結びつけるという、教職員では対応不可の支援を行うことができます。事実、スクールソーシャルワーカーによって、事態が好転した事案は数多くあります。行政もその有効性は認識しており、2015年度はスクールソーシャルワーカーの数を1466人から2847人へ増やす予定です。今後は、教育などの教職員が専門とする分野と、福祉の専門家が得意な分野をそれぞれ教職員、スクールソーシャルワーカーで分担し、子どもの支援の分業化という視点が大事になってきます。
それに伴い、現場に入ったワーカーは自分たちの職務と役割を学校関係者に正しく伝え、「ソーシャルワーク」という支援方法の有効性を伝えていくことも大切でしょう。気を付けるべき点は、ソーシャルワークもカウンセリングも子どもを支援するための手段の一つということです。どちらが有効な手段というわけではなく、状況に応じた活用が望まれます。
(中原 崇/社会福祉士)