スギ花粉の飛散量が例年の2〜3倍にも上るとの予想も
アレルギー性結膜疾患の中でも花粉症、とりわけ春先に生じるスギ花粉症は、毎年、多数の人に発症します。今年のスギ花粉の飛散量は例年並みとはいわれていますが、その飛散量は2〜3倍にも上ると予想されている地域もあり、この時期、当院も含め全国の眼科医院に多くの患者が訪れます。
日本眼科医会の調査では、我が国では約2,000万人のアレルギー性結膜炎の患者がおり、その大半は花粉症によるものであると推測されています。花粉症の原因は、スギだけではなく、カモガヤなどのイネ科の雑草や、ヨモギ、ブダクサ、ヒノキなどによるものもあり 、一年を通して何らかの花粉が空中を飛んでいることも事実です。
かゆみが最も代表的な目のアレルギーの症状
目のアレルギーの症状としては、かゆみが最も代表的なものです。目そのものがかゆく感じる場合もありますが、まぶたやまぶたのふちなどの部分に特にかゆみが現れやすく、かけばかくほど症状が強くなることもあります。これは、アレルギー反応の特徴ですので、適切な治療によってかゆみを止めることが必要です。
次に多いのは、ごろごろした感じ、「異物感」というものです。小さなゴミが入ったように感じることもあります。また、涙もよく見られる症状です。目やには多くはありません。一般的に、ある季節に毎年起きること、程度の差はあっても両方の目に生じることもアレルギー性結膜疾患の特徴です。
人工涙液点眼で洗い流すのが安全で効果的な対策
花粉症の場合は、症状の出現しやすい季節にできるだけ花粉と接しないように工夫することが重要です。ゴーグル型の眼鏡や花粉防止用のマスクの着用が最も効果的です。花粉が飛びやすい日は外出や洗濯物などを外に干すことを避けたり、外出から帰宅したときには服についた花粉を十分に落とすようにしましょう。目を洗うことは目を傷つけてしまうこともあるため、あまり勧められません。洗顔して目の周りを洗うことは良いでしょう。
そして、花粉を洗い流す工夫として、中でも人工涙液点眼で洗い流すのが安全で効果的です。人工涙液点眼は、涙の成分に近づけた目薬。そのため、使用回数を気にする必要がなく、花粉が目についたと思ったときに、いつでも目薬で洗い流すことが可能です。
人工涙液ではない市販の点眼薬には、防腐剤などの成分も含まれているため、防腐剤が原因でまぶたや目が荒れる場合もあり、お勧めできません。また、洗浄液を使用した目の洗浄も、大切な涙の成分も一緒に流してしまうためお勧めできません。人工涙液点眼(参天製薬のソフトサンティア やロート製薬のロートソフトワン点眼液)は薬局、ドラッグストアで購入可能です。これらの点眼は防腐剤(ベンザルコニウム塩化物など)が無添加のため、開けたら長期保存できず、開栓後、約10日間以上、経過した使い残りの薬液は使用しないでください。
ステロイド薬点眼は副作用も。使用には眼科医の診察が必要
最後に、花粉性結膜炎の治療には、「抗アレルギー薬」という薬が主として用いられています。これは、アレルギー反応の中で、かゆみやくしゃみなどを引き起こす指令を伝える物質が細胞から血液に出てこないように抑える薬です。通常、目薬として使用します。
症状が強い場合は、ステロイド薬点眼も用いられることがあります。ステロイド薬点眼は、適切に使用すればとてもすぐれた目薬ですが、目に緑内障などの副作用が現れることがあるので、使用にあたっては眼科医の診察が必要です。
(田川 考作/眼科医)