岐阜県が職員の出産・子育てを支援、男性職員の育休取得も
近年、男性の育休取得促進が叫ばれていますが、成果がなかなか数字に表れてこないようです。そんな中、「男性育休取得のモデルケース」になろうという地方自治体が現れ始めました。
岐阜県では、2015年度から職員が子どもを産んで育てやすい環境づくりに取り組み、男性職員の育休取得もサポートしていくそうです。果たして、地方自治体は民間企業のモデルとなりうるのでしょうか?
民間企業に比べ、育休の取りやすい公務員組織
私は、かつて民間企業で人事を担当していました。現在は、社労士でありながら非常勤の地方公務員(教職員)の身分も有しています。私から見ると、公務員の組織は民間に比べて育休が取りやすいと思っています。その理由は、いくつか考えられます。公務員は、男女雇用機会均等法施行前から男女平等です。育休制度も昭和の時代から整っていました。複数回育休を取り、定年まで勤める女性が多く存在します。
公務員には労働基準法の適用がない職種が多く、労働時間の管理が組織ではなく、個人の裁量に委ねられていることも大きいと思います。また、地方公務員は地元出身者が多いため、育児に協力しれくれる身内が近くにいることも強みだと言えるでしょう。育児で長期間職場を離れても、復帰するのが当たり前の風潮があります。
時短勤務で任せる仕事が縮小するなど、中小企業では負担大きく
しかし、民間企業ではかなり事情が違います。私が勤めていた大手小売業の店舗では、主婦のパートが従業員の大半でした。彼女達は、出産で仕事を辞めて子育てが終わって社会復帰してきています。
自分の部署で、育休や育児勤務に入る女性社員が出ると「私たちの頃には、育休も育児勤務もなかった。私だって仕事を続けたかったのに、今の人はいいわねえ」と、育児中の女性社員を応援するという雰囲気にはほど遠いものでした。また、会社の立場からすると、育休が終わって通常勤務に戻れる人はあまり問題ないのですが、時間短縮勤務となるとまず配置に苦労します。任せられる仕事の範囲が、通常の社員よりも狭くなってしまうため、本人にとっても不本意な部署での復帰ということも珍しいことではありません。これが、中小企業となると、会社の負担は相当大きくなります。
一律的な方法で推進するのではなく、組織に応じた対応を
地方自治体が、率先して男性育休の取得を推進することには大賛成です。しかし、地方自治体での事例を民間でも応用できるかと言えば、それは難しいでしょう。長い年月をかけて作られてきた組織の風土は、そう簡単に変わるものではありません。
男性の育休取得を一律的な方法で推進するのではなく、組織に応じた対応をするのが重要だと考えます。
(小倉 越子/社会保険労務士)