佐賀県武雄市が民間学習塾のノウハウを小学校に導入
佐賀県武雄市は6日、さいたま市の学習塾「花まる学習会」のノウハウを導入した市立小2校の開校式を開きました。先生が積極的に褒め、生徒が共同で物事を解決する同塾の手法を取り入れることで、学校を楽しく学べる場にし、「自ら考える力」を育てる狙いのようです。
官民が協力することは、子供たちの学習を活性化していく上でとても素晴らしいことです。しかしながら、小中学校の指導を補完する立場であった一民間企業の学習塾で行われている指導方法が、自治体と提携して導入されることには疑問があります。
疑問は「花まる学習会」の選択基準
「花まる学習会」の指導方法に惹かれ、公立学校で実践してみたいというのであれば、校長判断で4~6人の児童に1人の先生をつけ、教師を新たに増やして試験的に実践すればいいだけのことです。
つまり、自治体と「花まる学習会」が提携する必要性はまったくありません。疑問は「花まる学習会」の選択基準なのです。民間教育機関には、多くの学習塾ノウハウ、教材、システム教材が存在します。ところが、前市長でもあった樋渡氏は「花まる学習会を選んだのは、その教育論が奇抜で、議論や説明の対象になりうるから」と説明しているのみで、専門的な複数の教育者の判断ではなく、政治的判断というところに問題があります。
教師自らが教育方法を向上させることが本来の姿
武雄市における1日15分の花まる教室というのは、1年間の合計授業時間が本家の花まるの年間授業時間の合計とちょうど同じになる数字です。
■15分 × 平日242日 = 3630分 (武雄市花まる学園の1年あたりの授業時間)
■90分 × 42回 = 3780分 (本家花まる学習会の1年あたりの授業時間)
よって、年間教材費は本家の「花まる学習会」とほぼ同額になると推測されます。花まるの小学生1~3年生コースであれば、年間教材費は16,800円です。現在の武雄市の小学生は3000人弱ですので、10年契約となると4億円以上が教材費として「花まる学習会」へ支払われることになります。
学習方法は、子供たちの様子を見ながら進化するもので、「花まる学習会」の教材が素晴らしいものであっても、10年契約で提携することは官民の癒着としか考えられません。公立の教育機関として、広く民間教育の学習スタイルを研究し、教師自らが教育方法を向上させることが本来の姿であり、外部の力に頼るべきではないと思います。
(田中 正徳/次世代教育プランナー)