デスクワークなど1日の大半を座って過ごす現代人は肩こりが悩み
生活様式や職場環境の変化により、日本人の3人に1人が肩こりに悩んでいると言われています。その原因の代表として挙げられるのが、長時間のデスクワークです。昔は人生の3分の1を寝て過ごすと言われていましたが、現代ではそれ以上に座る時間が長くなっているようです。
家庭ではダイニングテーブルで食事をしたりソファでくつろいだり、会社ではデスクでパソコン作業をするなどイス中心の生活を送るようになり、1日の大半を座って過ごす私たちと肩こりは、切っても切れない関係になっているようです。
パソコン画面をのぞき込むことで背中が丸くなり前傾姿勢に
パソコン作業をしている姿勢を思い浮かべてみてください。ディスプレイをのぞき込み、キーボードやマウスを操作している様子を上から見ると胴体よりも頭と腕が前に出ています。
腕で3~4㎏(人によっては倍以上)、頭で体重の10分の1ほどの重さがあると言われていて、そこにさらに重力がかかります。上体が頭と腕の重さを支えられなくなってくると、次第に背中が丸まって骨盤が後傾し前傾姿勢になってしまいます。このとき、体の中ではどのような問題が起きているのでしょうか。
同じ姿勢を続けることで血行不良と酸素不足がおこり痛みが発生
人の体に備わっている筋肉にはポンプ作用があり、全身にくまなく血流が促されるように助けてくれています。ところが、長い時間同じ姿勢をとっていると、筋肉は伸び縮みができなくなり血流が滞ってしまいます。血液が低下した筋肉に老廃物がたまるとその組織周辺が酸性状態に傾き、痛みの原因となる物質「ブラジキニン」や痛みを増強する物質「プロスタグランジン」が発生する仕組みになっています。
がんこな「こり」をがまんしているとやがて痛みに変わり、ますます体が縮こまって血流が低下する、といった悪循環に陥ってしまいます。そして、ストレスなどによって自律神経のバランスが乱れ、血管を収縮させる交感神経の働きが優位になるとさらに血の流れが悪くなります。高ストレス社会といわれる今の日本では、こういったことが原因で「肩こり人口」はどんどん増えています。
簡単ストレッチで血流を促し、肩こりによる負の連鎖をストップ
最後に、職場でもできる簡単な肩こり解消法を紹介します。
(1)デスクを使った簡単ストレッチ
デスクに手がギリギリ届くぐらいイスを離します。そしてデスクのはしを手でつかみ、上体を前に倒し背中を伸ばします。このとき、頭を上げて左右の肩甲骨の間が伸びるのを感じることができます。
(2)背伸びと体側伸ばし
座った状態でもできますが、気分転換に立ってやることをお勧めします。両足を横(腰幅)に開き、まっすぐ天井に引っ張られるように背伸びします。次に、背伸びした状態からおへそを中心に左右に上体を倒します。脇から腰にかけて体の側面が伸びるのを感じてみましょう。
(3)立った状態で、体の後ろで手を組み真下に降ろす
上記のような動作をすることで、肩が後ろに引かれるのがわかると思います。その際、おなかが前に出ないように引っ込めた状態をキープし、息を吐きながら天井を見上げ、あごから首前面を伸ばしましょう。
どれも1セット(20~30秒)を3~5セットを試してみてください(痛みが伴う場合は中止し、専門家に診てもらいましょう)。体中の血液の巡りを良くして、肩こりによる「負の連鎖」を断ち切り健やかに過ごしてくださいね。
(伊藤 勇矢/柔道整復師)