喉頭がんは諸外国に比べ日本では発症率が低いとされる
つい先日、歌手のつんくさんが喉頭がん治療のために声帯を摘出し、声が出せなくなったというニュースが話題となりました。以前にも歌手の忌野清志郎さん、落語家の立川談志さんも同じ喉頭がんにかかっています。
しかし、喉頭がんは、諸外国に比べ日本では発症率が低いといわれているがんです。喉頭がんの原因は喫煙、飲酒、喉の酷使ともいわれていますし、忌野清志郎さんや立川談志さんも声を最大限に活用している方々で、やはり共通点があるのかもしれません。
初期の段階で治療を行えれば、問題なく治療が可能
喉頭がんは男性に多く、発症のピークは喉の疲労が起きやすくなる60代といわれています。男性に多いのは、飲酒や喫煙を行う人が女性よりも多いからではないかと推測されています。中年に差し掛かった男性で飲酒や喫煙を行う人は、喉の違和感に敏感になったほうが賢明です。
実は、喉頭がんは初期には95%の生存率を誇る予後の良いがんで、初期の段階で治療を行えれば、問題なく治療が可能です。また、喉頭がんは、がんの中では比較的初期の段階から症状がでやすいがんとされ、がんが声帯に発生した場合、声のかれで発症し、比較的早期に発見されることもあります。
時に無症状のまま腫瘍が増大する
しかし、声帯よりも上方もしくは下方にがんがある場合、必ずしも声の症状に表れてこないため、時に無症状のまま腫瘍が増大し、気道狭窄による呼吸のしにくさ、食べ物が飲みにくいなどの症状で発見される場合もあります。その他の代表的な症状は、喉の痛みや異物感, 血痰などといわれています。
喉頭がんの診断に際しては、まず内視鏡検査でがん病変の有無と、がんの浸潤による声帯の運動障害や神経麻痺などが起こっていないかをよく観察。病変部の一部を切除し、病理検査によって最終診断を行います。その後、CT検査やMRI検査などにより、腫瘍の周囲への浸潤や転移の有無を調べます。
喉頭がんの多くは放射線による治療効果が高い
喉頭がんの多くは放射線による治療効果が高く、周囲への浸潤がないがんの場合はかなりの確率で治療できます。それでも、放射線治療で不十分な場合には手術を行い、多くの場合は喉頭全部を摘出するために声を失うことになり、前頸部に呼吸のための孔(あな)をつくります。ただし、術後に食道発声法などによって会話ができるようになるとされ、つんくさんもこれを実践していく予定のようです。
発熱や喉の痛みなどの風邪症状が改善したにも関わらず、声のかれ・かすれなどの症状が持続する際には注意が必要です。声のかれは喉頭がんの初期症状として非常に分かりやすいもので、つんくさんも発病当初から声がガラガラになっていたのが、今でも思い出されます。
(佐藤 浩明/消化器内科専門医)