電力不足が落ち着いた後もそのまま早朝勤務が定着
出勤時間を早め、残業を減らす「朝型勤務」が広がりを見せています。早朝勤務が始まったきっかけは、東日本大震災直後の節電対応でした。夏の電力不足に備え、大手スーパーマーケット等が早朝営業を始め、各企業も出勤時間を早めるなどして、日本全国節電対応に追われました。さらに、夕方7時以降はエレベーターの運転やエアコンを停止するなど、非常時ならではの徹底した節電対策で従業員の退社時間が早まり、必然的に残業の削減につながりました。
当初は抵抗があった従業員たちも早朝勤務の効率の良さ、早々に会社を出て自分の時間を楽しむことの有意義さを実感し、電力不足が落ち着いた後もそのまま早朝勤務が定着していきました。
労使双方にとっていい取り組み
その後、早朝出勤には割増賃金などを支給し、早朝勤務をバックアップする企業が増えています。会社として早朝勤務に取り組むことで従業員の士気が上がり、残業削減などに繋がっているのであれば、労使双方にとっていい取り組みといえるでしょう。また、一般従業員は大抵、「上司が帰らないと、自分が先には帰りにくい」という気持ちを持っています。
しかし、会社にバックアップしてもらえれば、後ろ髪引かれることなく、仕事が終わればすぐに退社することができます。会社も意味のない残業にまで、給料を支払う必要がなくなります。
厄介なのは「人についてまわる残業」
一方で、早朝勤務だけではなくならない「人についてまわる残業」があります。どんな部署に行っても、どんな仕事をしても、常に残業が多い人はいます。部署の中で突出して残業が多い、仕事を減らしても残業をする、残業がない部署に異動させてもなくならない、残業禁止の指示を出しでも残業するというように、残業が癖になっている人を意外に多く見かけます。極端な人になると、タイムカードを押してからも仕事をするという自主的サービス残業をする人さえ存在するようです。
私はこの「人についてまわる残業」の方が厄介だと、人事を担当していた頃から考えていました。体質で残業せずにはいられない人もいますが、残業代を稼がなければ生活ができない、仕事以外にやることがないから残業するといった、個人的な理由で残業を繰り返す人もいます。
力づくで仕事をするのを、やめさせるわけにはいきません。誰がどう説得してもなくならない残業は、企業が早朝勤務をバックアップしたところで意味はありません。こうした「人についてまわる残業」に対する特効薬はないものかと、社会保険労務士になった今でも考えています。
(小倉 越子/社会保険労務士)